The Kyoto Shimbun

第1部 「低下」騒動の裏側で(2)

総合学習は不要か 活用校 教科学習に効果 問われる教員指導力

 2月中旬、京都市立桃山東小(伏見区)で開かれた研究発表会。全国の教員が見守る中、5年の「総合的な学習の時間」で児童たちが、ボランティアに携わるゲストの話に聞き入った。

 年度当初は、京都を訪れる外国人を題材とした国際理解が総合学習のテーマだった。しかし、昨年末のスマトラ沖地震が子どもたちの心を大きく動かし、「被災国に自分たちでできることは何か」を考え始めた。

教科書のない模索
 当初の授業計画を変更。地震の被害を題材に取り上げ、児童たちは被災国について調べた内容を算数で学んだ「割合」を使ってグラフにまとめた。

 担任の土田圭子教諭は「総合学習で教科の学習が生かせることがわかれば、学ぶ意欲につながると実感している」と話す。

 授業後の研修会では、カリキュラムの組み立て方に質問が集中した。「どこまで計画に組み込み、子どもに合わせて軌道修正したか」「ゲストとは、どの程度打ち合わせたか」。一問一問からは教科書のない教科、総合学習に取り組む学校現場の模索が透けて見えた。

 経済協力開発機構(OECD)などの調査結果を受け、中山成彬文科相は中央教育審議会に、授業時間の見直しを要請した。背景には、2002年度からの総合学習の本格導入で教科学習の時間が奪われ、「学力低下」を招いた、との批判がある。

 しかし、京都市教委の門川大作教育長は「総合学習を活用している学校で学力向上がめざましい」と反論する。「学びと生活がかけ離れている子どもの現状をみれば、総合学習を通じて、生活や地域、社会から学びに切り込むことが大切だ」

総合学習でゲストの話を真剣な表情で聞く子どもたち。教科学習とどう関連づけるかは、教員の指導力次第だ(京都市伏見区・桃山東小)
理科で16%上回る
  下京区のある小学校長も「総合学習で目指す、課題を解決するという力が教科学習にも生かされ、相乗効果が出ている」と話す。昨年4月に行われた学力定着調査では、理科が全市平均を16%も上回った。

  逆に、「教科学習が身についていないと、総合学習も生かせないのではないか」と提起するのは伏見区のベテラン教員だ。「効果を左右するのは結局、教員の指導力。総合学習で問われるのは学校の『実力』であり、学校間の学力格差をさらに広げる恐れもある」

「育てる力」が必要
 教育のカリキュラムは、学習内容を横軸、学ぶ順序を縦軸として編成される。教科学習では教科書がその役割を担い、教員には知識を「教える力」が問われる。教科書のない総合学習で求められるのは、人間を「育てる力」だ。

 京都ノートルダム女子大の加藤明教授は「学力低下とは教員の指導力低下にほかならない。まずは、どのような力を総合学習ではぐくむのかを明確にし、カリキュラムを組むことが必要。『心が動いてものを知る』体験をすることで、生きるための学力につながる」と指摘する。

[京都新聞 2005年3月2日掲載]

総合的な学習の時間
 自ら課題を見つけ、解決する力を育てることを目的に、教科横断的な学習として2002年度から本格導入された。地域の特色などを生かして各学校がテーマを設定、小中学校では週2―3時間程度を充てている。

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