The Kyoto Shimbun

第1部 「低下」騒動の裏側で(3)

2006年問題 新課程の学生に危機感 各大学が対応模索

 「数学できれいな現象が起きると、必ず『からくり』があります」。京都府立嵯峨野高(京都市右京区)で京都こすもす科・自然科学系統の1年生を相手に、円についての授業を始めたのは京都教育大の丹後弘司教授だ。教室の雰囲気をみながら「9点円の定理」「フォイエルバッハの定理」の解説を続ける。生徒が真剣な表情で聞き入るうちに、授業はいつしか、大学レベルの射影幾何学の世界へ−。

大学教員が講師に
 同高では1996年度の京都こすもす科の創設以来、大学教員を講師に迎えている。高橋文正学科長は「偏差値で進路を決めてしまうと、入学することがゴールになる。大学の学問は無限大であることに触れてほしい」と思いを込める。

 近年、各校で「高大連携」が進む。背景には高校だけでなく、大学にも「高校生の学習意欲を高め、学力向上につなげる」という課題がある。

 少子化が進む一方で、大学の定員はあまり減っていない。進学率が上がり、従来より学力レベルが低い層も進学する。これが、構造的な「学力低下」を招く一端、との見方がある。入試方法の多様化も、大学生の学力をばらつかせる原因になっている。「高校に関心を持たざるを得ない」(大学コンソーシアム京都事務局)のが現状だ。

合格点5割以下に
 さらに、大学関係者が神経をとがらせるのが「2006年問題」だ。完全週5日制が導入され、教科内容も大幅に削減された新課程で育った生徒が06年、初めて大学生となる。

大学レベルの数学を教わる高校生。ゴールのない学問の世界への入り口となるか―。(京都市右京区・府立嵯峨野高)

 昨年12月24日。京都市中京区のホテルに、京都大で理系科目を担当する教員約70人の姿があった。「2006年問題」をテーマにした1泊2日のワークショップ。物理など教科ごとの現状を話し合い、「06年に向け、カリキュラムの在り方を議論する出発点となる記念すべきクリスマスだった」。京都大高等教育研究開発推進機構の林哲介副機構長は振り返る。

 京都大は私立中高一貫校出身者の比率が他大学よりも高く、「ゆとり教育」の影響は比較的小さい。それでも、二次試験の理科で合格点が10年前の6−7割から5割を切るまでに低下。論理的思考力や言葉の「劣化」はさらに深刻という。

教育内容見直しも
 この現状に、単位認定を厳しくし、卒業生の学力レベルの低下に歯止めをかけた。さらに、入試でも、学力格差につながっている後期を07年度から取りやめ、前期に一本化にする。

 全国では、3分の2以上の講義への出席を義務づけたり、成績の悪い学生に退学を勧告する大学さえ現れた。

 「06年には基礎的知識のない学生が増え、特に自然科学系では4年間の教育を根本的に見直さなければならないだろう」と林さん。「(大学が学生に学ばせる)流れに逆らい、学生が自ら学ぶという大学らしい教育がどこまで守れるだろうか」

[京都新聞 2005年3月3日掲載]

高大連携
 高校生の学習の質を高めるため、大学教員が高校で講義したり、大学の授業を受けたりする。一方、学力低下に対応するため、大学生が高校の授業を受講したり、高校教員が大学での補習を受け持つケースも増えている。

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