The Kyoto Shimbun

第1部 「低下」騒動の裏側で(4)

揺らぐブランド 学ぶ意味 見えにくく 「学歴神話」崩壊の陰で

 「キャリアはつくらせるのではなく、自立的につくるもの。変化の激しい時代、選択肢を広げるには自分のよりどころを自覚させるしかない」

 2月下旬、京都産業大(京都市北区)の一室。官公庁や民間企業の人材研修に携わってきた会社社長の話に、キャリア教育に取り組む教員15人が真剣な表情で耳を傾けた。

就職率が「看板」に
 卒業生の会社役員・管理職数の伸び率では大学トップを走る「就職の京産大」。1年から企業などで就業体験を重ね、「大学で何を学ぶべきなのか、専門分野への自覚を促す」という独自のキャリア教育を進める。企画メンバーの1人、井上一郎教授は「学力差のある学生に対し、それぞれに合った形で施策を打ち、どう激動の時代を生きる根幹的な力をつけさせるか。そこに挑戦する」と話す。

 15年前に比べ、大学数は4割増え、学生は4割減った。2年後には大学全入時代に突入する。「早稲田大なら就職率50%でもびくともしないが、名のない大学なら学生に敬遠され、つぶれる。それが現実」と、ある私大関係者。競争が激化する中、就職率の高さを看板に生き残ろうと、各大学が適性検査やビジネスマナー、資格など幅広いキャリア教育を展開している。

学生に根幹的な力をつけるキャリア教育の在り方とは―。教員らの模索は続く(京都市北区・京都産業大)

大学名よりやる気
  一方、企業はどのような目を向けているのか。経団連の昨年の調査では採用選考で「コミュニケーション能力」を重視する企業が75%でトップ。「チャレンジ精神」「主体性」と続き、「大学名」は3%にすぎない。

 不況による業績低迷で、リストラの洗礼を受けた産業界。その痛みが、大学名ではなく、必要な人材だけをかぎ分ける臭覚を鋭くさせている。

 日本電産の境健司人事部長は「ブランド大であってもやる気のない人は入社したら不幸になる。大学名は重視しない」と言い切る。「答えのある問題を早く解くことが試される学力と、企業が求める課題解決力は違う」と話すのは、堀場製作所の野崎治子人事教育部長だ。「最近は適性検査だけで決める学生が多く、一度つまずいたら起き上るための足腰が弱い。人生を最短距離で歩もうとし過ぎる傾向も気になる」と、キャリア教育の思わぬ弱点にも触れる。

働く生きがい薄れ
 一方、今もなお再編統合が続く金融業界。京都銀行の大井成夫取締役は「働く生きがいをどう持たせるかを考えなければならない時代になった」と言う。

 京都銀行が実施する中途採用には、メガバンク出身者が大量に押し寄せる。先行き不透明感が漂う中、「メガバンクのブランドよりも、仕事も家庭も守りたいという考え方に変わってきた」。

 「いい大学から、いい会社へ」という「学歴神話」は崩れ、ブランドの求心力も弱まっている。大井氏は指摘する。「なぜ学ぶのか、を子どもたちに伝えることも、ますます難しくなっていくのかもしれない」

[京都新聞 2005年3月4日掲載]

大学全入時代
 少子化に伴い、大学・短大の入学定員と入学志願者が同数になる時代。文部科学省は昨夏、従来の試算を2年早め、2007年度になるとの見通しを示した。人気のない大学は定員確保が一層困難になることが予想される。

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