The Kyoto Shimbun

第2部 ゆとり教育は今(1)

タカシ君の成長 周囲見る気持ち芽生え 総合学習がはぐくむ力

 朱雀第四小(京都市中京区)の図書室。白板には「ごみ」「リサイクル」「植物」「生き物」「空気」「水」という六つの言葉が書かれている。

 「これを調べたいな、という課題を選んでください」。「総合的な学習の時間(総合学習)」で、6年生担任の山口勝之教諭(29)が子どもたちに呼びかけた。白板をしばらく眺めていたタカシ君(11)=仮名=は、ひざの上のプリントに迷いなく、「空気」と書き込んだ。

 「地球には二酸化炭素が増えてるって聞いたし、ぼくたちが二酸化炭素を減らすのにできることはないか調べてみたい」。遠慮がちに笑った。

教科しわ寄せも
 総合学習は、詰め込み教育の反省から生まれた「ゆとり教育」の象徴として導入された。しかし教科学習の時間を削ったことで今、「学力低下」批判の的になっている。  朱雀第四小では、総合学習の主題に環境を選んでいる。子どもたちが体験を通して課題を発見し、調べた結果を発表する。山口教諭が示した6つのテーマも、子どもたち自身が校区内を歩いて見つけてきたものだ。

 タカシ君と同じ「空気」を選んだ子どもたちはグループをつくり、自分だけの課題を探し始めた。

 「教室ごとの空気のきれいさが比べられへんかな」「どこも同じにならへん?」「車の排気ガスって調べられるんかな」「本に載ってるん違うかな」。友達の意見に耳を傾け、一緒に答えを探そうとするタカシ君。山口教諭は「周りにも目を向けられる力がついたな」と感慨深げだ。

 山口教諭は5年生の時からタカシ君を見つめてきた。「丁寧さや発表への積極性は持っていたけど、周りをひっぱっていこうという意識は少なかった」

 しかし、5年生の終わりごろ、タカシ君の態度に変化が現れた。

 同じ発表グループに、まとめが遅れている子がいた。すでに終えていたタカシ君が「ぼくが調べたのを参考にしてみて」と手を差し伸べたのだ。

自分の調べたい課題を見つけるため、クラスメートと議論する子どもたち(京都市中京区・朱雀第四小)

点数のない評価
  山口教諭は「1人でさっさとやるのでは、という予想はいい意味で外れた。1人1人が違う課題をもって学ぶ総合学習だからこそ、周りを見る気持ちが養われたと思う」と話す。

  総合学習の評価に点数はない。教師が子ども1人1人の成長を自由に記述する。「算数のように、この計算ができたから、という評価の目安はない。でも、総合学習では、まとめ役になれたり、周りへの気配りという点が評価できる。これこそが、目に見えない学力」と強調する。

 「空気」グループでの議論を経て、タカシ君は、今年の課題を「校区の空気の汚れについて」に決めた。「できる限り子どもの思いを大切にして、これだけのことができた、と実感させてあげたい」。山口教諭は卒業の日のタカシ君たちの姿を楽しみにしている。

◇    ◇


 学力低下への不安から、ゆとり教育が揺らいでいます。シリーズ「学力」とは?第2部では、ゆとり教育を鮮明にした新学習指導要領の実施から4年目の今を追います。

(「学力」とは?取材班 西川邦臣)

[京都新聞 2005年5月17日掲載]

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