The Kyoto Shimbun

第2部 ゆとり教育は今(2)

答えは…半月後 理科に「楽しさ」プラス 理解通じて学ぶ意欲に

 半分に切ったペットボトルと、自宅や学校の近くで取った土を持って、安祥寺中(京都市山科区)の1年生が理科室に集まる。生徒たちに知らされているのは、身近な生物を観察する理科の授業ということだけだ。「先生、これで何すんの」。村田直樹教諭(41)に、生徒たちが質問を投げかける。

知識と経験総動員
「ペットボトルに持ってきた土と水を入れ、理科室の外に置いてください」。日当たりの良いところ、校舎の陰…。指示通りに置いた生徒は、次に何が起こるかを、これまでの知識や経験を総動員して考える。

 「雑草が生えてくると思う」「浮くものと水、沈むものの3層に分かれるのでは」。答えが出るのは、半月後だ。

 安祥寺中では、村田教諭ら理科を担当する3人の教諭が、4年前から理科教材の共同研究を続けている。授業の導入部などで、生徒自身に実験させるためだ。「理科嫌いの子が増えているのは、理科本来の楽しさを知る機会がないから。教科書の内容を飛び越えてでも、わかる面白さを伝えたい」と思いを語る。

理科の授業で、ペットボトルに土と水を入れる生徒たち(京都市山科区・安祥寺中)

「間引き方」に問題
 授業時間数が減った新学習指導要領の導入で、理科嫌いの傾向は、より顕著になっているという。教科書も内容が大きく削減されたが、さらに問題なのは「その指導内容の間引き方だ」と村田教諭は指摘する。

 小学校で「酸とアルカリ」を学ぶが、中学校で「イオン」の学習が削られたことで、生徒たちは中和反応など物質の性質について理解しづらくなった。「静電気」を学ぶ時期が、冬場から初夏に移ったが、「そんな時期には静電気を体感できない。『学び時』を無視している」。子どもたちが実感できず、考えを深めにくい内容構成も、理科嫌いを助長している。

 「数学を解ききった時に楽しさを感じるのと同じで、理科も理解しきったときに、わかったという実感が持てる。そのために、生徒には極力、体験を通して学んでほしい」と話す。体験から学ぶというアプローチは、総合学習と同じだ。

 一方で、「花の名前や形の知識があるからこそ、植物採集で見知らぬ花への興味がわく」と話すのは、村田教諭とともに教材開発を進める水谷和之教諭(44)だ。知識と体験を組み合わせ、どう相乗効果を生み出すか。

 「生徒に一番いい手法を考えることが、今の教師には必要だ」  ペットボトルを置いてから半月後。水面にはどこかから飛んできたユスリカが浮かび、水中ではプランクトンが動いていた。土の中で乾燥に耐えていたのだろうか。

 顕微鏡をのぞき込む生徒たちは、思わぬ変化に驚きの声を上げた。村田教諭はいう。「身の回りで体験する活動がほとんどない今、想像して考えることが大事。生徒の予想は、ある意味すべて正解です。間違いなんてない」

◇    ◇


 授業時間や学習内容の削減は、受験という進路選択を控えた子どもたちにどう影響しているのでしょうか。次回は高校での「ゆとり」の実情について見ていきます。

[京都新聞 2005年5月18日掲載]

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