The Kyoto Shimbun

第2部 ゆとり教育は今(3)

矛盾の交差点 高校、まず中学の復習 学習内容減しわ寄せ

 「教科書の内容に入る前に、みんなにやってもらいたいことがあります」。塔南高(京都市南区)で始まった1年生最初の古文の授業で、国語科の谷内秀一教諭(44)は、プリントを配りながら生徒たちに呼びかけた。印刷されているのは、徒然草と枕草子、竹取物語の冒頭部分。いずれも、中学校ですでに習ったはずの教材だ。

「授業成り立たぬ」
生徒たちは、読み仮名を付けながら谷内教諭に続いて音読し、中学校の記憶をたぐり寄せていく。「高校の学習の前に、まず中学校の復習から始めないと授業が成り立たないんです」。机の上に出された真新しい高校の教科書は、結局、この日の授業で使われることはなかった。

 塔南高は今春から、1年間を4つの期間に分ける4ターム制を導入した。学習期間を短く区切り、単元ごとのテストをこまめにして学力の定着を図る狙いだ。特に1年生の第1タームは、中学校の復習と、高校生としての学習スタイルを確立させる「重点期間」と位置づける。

 「ここ4、5年の新入生をみていると、中学の学習内容の積み残しが多く、高校で必要な基礎学力や学習習慣が付いていない」と谷内教諭は指摘する。

 古文の現代語訳を示しても、その現代語の意味が分からない。中学では穴埋め式のプリント学習が中心だったため、ノートのとり方すら知らない生徒もいる。こうした傾向は、ゆとり教育を前面に出した新学習指導要領の導入以降、強まっているという。

 知識偏重という批判から生まれたゆとり教育では、子どもが自ら学ぶ力を重視し、小学校から高校までの学習内容を大きく減らした。ところが、大学入試で多くの知識が要求される点は以前と変わっていない。

中学で学んだ内容を授業の中で復習する生徒たち(京都市南区・塔南高)

変わらぬ大学入試
 入学する生徒の知識不足が進む一方で、送り出すまでには入試を突破できる力を付けさせなければならない。結果として、小学校から中学校、中学校から高校へと学習内容削減のしわ寄せが生じる。「小、中学校段階での『ゆとり』は、子どもに楽をさせるという別の意味になっていないか」と谷内教諭。「高校は制度の矛盾の交差点にある」というのが、ゆとり教育に対する高校教諭たちの本音だ。

 そこで、塔南高は来年度、3年生の第2タームから9時間授業に踏み出す。1こまの授業時間を5分減の45分に短縮しても、すべての授業が終わるのは午後5時15分。教員の所定勤務時間の終了時刻だ。「教材研究など、授業の準備は勤務時間外になるが、そうでもしないと生徒たちに力をつけてあげられない」

 効果は未知数だが、谷内教諭はターム制に期待を寄せる。「学ぼうとする生徒をバックアップするために、できることをしてあげたい。知識の不足は生徒が悪いのでも、小学校や中学校が悪いのでもないのだから」

◇    ◇


 限られた時間の中でいかに教育効果を高めるか。教師の指導力も大きく問われています。次回は、教科書のない教科「総合学習」の充実に向けて議論を重ねる教師の姿を追います。

[京都新聞 2005年5月20日掲載]

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