The Kyoto Shimbun

第2部 ゆとり教育は今(5)

ワンダーランド 子どもの居場所づくり 地域で育てる「生きる力」

 「こっちで遊んでいきませんか。おもしろいよー」。にぎやかな声に誘われ、小学生や幼い子の手を引いた若い父母が順番待ちの列をつくる。お目当ては、中高生たちが中心になって考えた、遊びのコーナーだ。

 段ボールをバットでたたく「デカデカだるまおとし」に、空き缶を崩さないように立てる「かんつみ競争」…。突風に空き缶が飛ばされるハプニングもあるが、それもまたおもしろい。「おまけで10点あげるわ」。中高生も機転を利かせて、集まった子どもたちを盛り上げた。

土曜「空白の一日」
 京都市山科区の児童公園で開かれた「こどもフェスタ」の一幕。子育て中の父母や地域住民、学生ボランティアでつくるNPO法人(特定非営利活動法人)「山科醍醐こどものひろば」が企画した。「子どもが自分でつくり出す活動を大切にして、近所の公園を、遊びのワンダーランドにしたい」。理事長の朱まり子さん(52)は思いを語る。

 子どもを対象にした観劇活動をきっかけに、地域で子どもたちを見守り続けて25年。朱さんは、「ゆとり教育」導入後の子どもの変化を見逃さない。「学校に行く日が週5日になって、暇になった子と、暇でない子がはっきりしてきた」

 学校週5日制で土曜日が休みになる一方、減った授業時間を確保するために、平日を6時間授業にする学校が増えた。塾や習い事に通っている子は平日に遊べる時間がさらに減り、予定のない子には、土曜が「空白の一日」になった。

手作りの遊びコーナーで遊ぶ子どもたち。会話を交わしながら、楽しい空間を作り上げていく(京都市山科区大宅・早稲ノ内児童公園)

学校の枠の外でも
 塾や習い事を否定するわけではない。ただ、「塾や習い事という場では、自分では思ってもいないような『レッテル』を張られたり、子どもなりに演じなければならない役割がある」と朱さん。一方、休みを思うように過ごそうにも、子どもたちを脅かす事件が頻発する昨今、公園で自由に遊びまわることもままならなくなってしまった。

 「本当の自分らしさを出せる場所が、今の子どもたちにはあるのだろうか」。朱さんには、自問する場面が増えた。

 ゆとり教育に伴い、学校では子どもが自ら考えて課題を解決する「生きる力」を育てるため、総合学習が取り入れられた。朱さんは「自分の意見をまとめたり、興味のあることを追い求める力が、子どもたちについてきた」とは感じている。

 「そうした力を生かせる場をつくってあげるのが地域ではないか。人と人とのつながり合いが薄くなっている今、子どもはほったらかしでは育たない」

 朱さんらの事務所には、子どもたちが読書などを楽しめるフリースペースがある。「学校がない日の子どもの居場所にしたい」。目指すのは、アニメ「ドラえもん」で主人公らが日々集まり、遊びを編み出す、あの「土管のある公園」だ。

 「学校という枠の中ではなく、地域だからこそ、子どもがいくつになってもずっと成長を見続けられるんです」

(第2部おわり)

[京都新聞 2005年5月22日掲載]

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