The Kyoto Shimbun

第3部 教壇から(2)

誰にも言えない 「協調」揺さぶるFA制 格差には疑問の声も

 「自ら体を動かし、子どもの目線での生活指導に力を入れます」。昨年暮れ、常磐野小(京都市右京区)で6年生の担任をしていた田村淳教諭(44)は、異動希望の自己アピール書に、こう記入した。

 同小に赴任して10年。3月には、入学時から見守り続けてきた児童たちを中学校へと送り出す。「よい区切りだし、今までの学校で培った力を他の学校で生かしてみたい」。自らの意思で赴任校を選べる「教員版FA(フリーエージェント)制」に名乗りをあげた。

 FA制は、京都市教委が2004年度異動から創設した。希望する教員に赴任校の選択権を与えることで、やる気や能力を引き出すことが狙いという。

10校超からの指名
 「与えられた仕事を黙ってこなす。どちらかというと、そんな職業観を持っていた」。学校では、教員がチームを組んで授業や教材研究を行う。自分をアピールすることに対して抵抗感があった。自分の力を買ってくれる学校があるのかも不安だったが、10校を超す学校から指名の申し出があった。

 「うちは児童の体力向上への取り組みがまだ不十分。生活指導面やクラブ、体育の指導で力を貸してほしい」。二条城北小(上京区)への移籍は、大澤和子校長の言葉が決め手になった。「熱心に現状を語ってもらい、学校の中で自分の果たすべき役割がはっきり見えた」

 そして、今春。明確な目標を持って同小へ異動した。やりがいもある。しかし、同僚には積極的には話しにくい。

「どうや、うまく解けるか」。児童と目線の高さを合わせて声をかける田村教諭(京都市上京区・二条城北小)

公表、10人に満たず
 FA移籍した教員は、2年間で215人にのぼるが、公表しているのは10人に満たない。「FAによる異動かどうかで、保護者や子どもたちの見方が変わるのではないか。協調性が求められる教育現場では、浮かれている訳にはいかない」。ある小学校教諭は打ち明ける。

 学校現場は、校長・教頭以外の教員が同列に並ぶ「なべぶた型」の構造だ。管理職の道を選ばず、定年まで教壇に立ち続ける教員は多い。FA制には、学校現場を校長を中心にした「ピラミッド型」組織に変える狙いもある。市教委は今夏、優れた指導力を持つ教員を「スーパーティーチャー」として認証する制度も始め、さらに、流れを推し進めようとしている。

 しかし、現場からは「先生に『格差』をつくることで、教育の質は上がるのか」「スーパーティーチャーに認証された先生は、逆に指導が難しくなるのでは」と疑問の声も上がる。オープンに語れないFA移籍からは、制度のひずみも見えてくる。

教師にはいい重圧
 6年生の担任になった田村教諭は「子どもの目線に立つ授業」を心がけている。「思いをアピールしておしまいでは、子どもたちに失礼。FAは教師にとっていいプレッシャーになる。私はFAで来た、と自信を持って言える環境にすることがまず大事ではないか」

[京都新聞 2005年7月13日掲載]

教員版FA制
 京都市教委に教諭として採用されて10年以上、現赴任校に3年以上勤務する教諭が対象。各校園長が自己アピール書を閲覧し、面談などを経て指名する。2005年度異動では166人がFA宣言し、105人が移籍した。

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