The Kyoto Shimbun

第3部 教壇から(3)

辞めたくない 指導力不足で突然免職 子への対応力より厳しく

 「4月以降、あなたの採用を継続できない」。京都市内の小学校で5年生を担任していた下川孝之さん(32)=仮名=は2月1日、呼び出された京都市教委の一室でこう切り出された。「指導力不足」が理由だった。

 下川さんは、昨年4月に採用された。秋ごろ、私語を続けて授業を妨害する児童がクラスに現れ、保護者からも担任批判が相次いで学校に寄せられた。

 短い講師経験はあったが担任は初めて。「確かに至らないところはあった。でも、改善できた点もある。わずか1年で教職を奪われるのは納得できない」。悩んだ末、校長に「子どもが大好きだし、教師を辞めたくない」と伝えた。だが、まもなく分限免職処分の辞令が届いた。

7年間で94人退職
 指導力不足を理由に市教委が退職を促した教員は、1998年度から7年間で94人。教職員人事課は「教員に求められるのは、教科の知識や指導法よりも、多様な児童・生徒への対応力」という。教員採用試験でも「人物重視」を掲げ、一次試験から面接を行い、ボランティア活動歴を重視し、二次試験で模擬授業も課している。

 しかし、「現場がほしいのは、日々変わる生徒たちに柔軟に対処できる教員。試験だけで見るのは限界があるのでは」と、過去に面接官を務めた市内の中学校長は疑問を投げかける。

 京都御池中(京都市中京区)で理科を教える廣田龍哉さん(26)は講師歴4年。昨年は非常勤だったが、今年は常勤講師として赴任を求められた。「教材研究に真剣に取り組み、部活動指導でも実践力がある」「僕らの意見をまじめに聞いてくれるお兄さんのような先生」。校長や同僚、生徒たちの信頼は厚い。

毎年多くの教員が採用される一方、指導力不足で現場を去っていく教員もある(京都市内の小学校)

採用試験が壁に
 そんな廣田さんに立ちはだかるのが採用試験の壁だ。これまでに4度受験したが、合格には至らなかった。「学校で子どもたちと接する時間が長くなるにつれ、教員になりたい思いが強くなる」と話すが「よりよい授業を目指して放課後を教材研究に充てると、試験勉強の時間がなくなる」と打ち明ける。

 教員免許を持つ人なら、教育委員会に登録して講師になれる。常勤講師は、子どもたちからすれば「先生」であることに変わりはない。しかし、講師は原則1年更新で、次年度も教壇に立てる保証はない。

講師経験生かし
 京都御池中の前の中学で、クラス担任も経験した廣田さんは学級運営で大失敗したという。「『ぼくはこう思う。おまえら付いてこい』と意思を押しつけたら、生徒が一斉に拒絶反応を示し、授業が成り立たなくなった。子どもの気持ちが大切だということが、講師をしていたからこそ体感できた」と語る。

 廣田さんは今夏、5回目の教員採用試験に挑む。「教員になれたら、生徒が協力し合って目標に向かっていけるクラスをつくりたい。それが指導してくれた先生と、なにより生徒たちへの恩返しになるから」

[京都新聞 2005年7月14日掲載]

指導力不足教員
 児童・生徒と信頼関係が築けないなど、適切な指導が行えない教員を指す。文部科学省によると、全国で2003年度に指導力不足と認定された教員数は481人。各教委ごとに認定基準や研修体制などを定めている。

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