The Kyoto Shimbun

第4部 受験狂騒曲(1)

奇跡のからくり 粒ぞろいの人材先取り 専門学科 私学に対抗

 今月19日、八幡市内の学習塾が開いた中学3年生対象の入試個別相談会に、京都や大阪の私立高に交じって初めて京都の公立高5校が参加した。多くの京都大現役合格者を出す堀川高や、嵯峨野高、西京高、南陽高、桃山高と、いずれも京都府、京都市両教委自慢の「新しいタイプの専門学科」を強みとする学校だ。

 「民間主催の相談会に公立高が参加するのは、今までになかったこと」。企画した学習塾の江川進二塾長は言う。こうした相談会は従来、私立高が熱心だった。だがこの日は、大半が入試担当者だけの私立高に対し、公立高では校長と教頭が率先してPRする姿が見られた。背景には、私立高をしのごうという両教委の思惑がある。

いきなり京大6人
 公立高の専門学科といえば、かつては農業や工業、商業など職業に直結していた。だが、1996年に嵯峨野高が「京都こすもす科」を開設したのを契機に、堀川高や西京高が次々と普通科型の専門学科を設置する。普通科と違って通学圏にとらわれず府内全域から募集できるうえ、推薦入試で優秀な人材を先取りできる。粒ぞろいの生徒を集め、事実上の「受験専門学科」にしようという狙いだ。

 こうした専門学科の特長をいち早く見せつけたのが、堀川高探究学科だ。一期生6人が2002年度入試でいきなり京都大に現役合格。以降も10人、32人、24人と、着実に京大の合格実績を挙げている。私学優位だった京都で公立復権の先鞭(せんべん)をつけ、市教委も「堀川の奇跡」と呼んではばからない。

専門学科を持つ公立高5校が参加した学習塾主催の入試個別相談会。人気を集めるのは、公立高のブースだった(八幡市男山竹園・市立生涯学習センター)

進学地図塗り替え
 「いずれ京都の進学地図は塗り変わる。洛南、洛星、(京都教育大)付属、堀川という『京都4強時代』がやってくる」

 探究学科の開設を翌年に控えた1998年、当時教頭だった堀川高の荒瀬克己校長は校内会議で「予言」した。「探求科を設ければ府内全域から優秀な人材を確保できる。入学する生徒の質が変われば学校は変わる」という確信があったからだ。

 シナリオ通り、かつて二十数人が最高だった国公立大の現役合格者数は今春、100人を超えた。「実際に京都の進学地図は塗り変わった」(江川塾長)。

「営業力」が不可欠
 少子化の中、生き残りをかける多くの公立高にとって、校長らが塾を回ってアピールすることが不可欠になった。生徒獲得の情報戦を左右する塾は無視できないからだ。「堀川に負けない人材を集めたい」という思いが、校長らの背中を押している。江川塾長は言う。「特に専門学科を持つ公立高は、私立高に負けないぐらい『営業力』を強化している。いかに優秀な人材を確保するかが、生き残りのカギを握る時代になっている」

◇    ◇


 小中高校に「ゆとり教育」が導入された後も、大学受験のシステムは依然として変わらず、矛盾が生じています。シリーズ「学力」とは?第4部では、受験と学力との関係を考えます。

(「学力」とは?取材班 有賀美砂、西川邦臣)

[京都新聞 2005年9月28日掲載]

新しいタイプの専門学科
 嵯峨野高や堀川高のほか、西京高が「エンタープライジング科」を設置。2006年度からは桃山高が「自然科学科」、南陽高が「サイエンスリサーチ科」、亀岡高が「数理科学科」、西舞鶴高が「理数探究科」を設ける。

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