The Kyoto Shimbun

第4部 受験狂騒曲(2)

いたちごっこ すれ違う 3者の思惑 高校と大学 予備校絡み

 「遅くなって、申し訳ありません」。9月中旬、京都府立西城陽高の一室。京都市内や府南部の府立高から、授業を終えた数学教員が息せき切って駆け込んでくる。メンバー5人がそろうと、司会役の洛北高・野村康隆教諭が「今日は大阪大向けのベクトルの問題から始めましょうか」と口火を切った。

学ぶ「授業の達人」
 府教委は本年度、府立高教諭が予備校講師から受験指導の技術を学ぶ「授業の達人」事業を始めた。京都大や阪大、神戸大など難関大の志望者のために入試の模擬問題を作成し、来年2月に開く入試直前学習会で使う予定だ。

 野村教諭のグループは、阪大と神大の模擬問題を担当する。この日、ある教諭はベクトル問題に関する阪大の出題傾向を踏まえ、「2006年度は、やや易しくなるのでは」と予想し、三角形の重心などとベクトルをからめたやや基本的な問題を提案した。他の教諭も微積分や不等式、整数を扱った問題を持ち込み、「難しすぎないか」「生徒の誤解を生む表現になっていないか」など議論を重ねた。

難関大の2次試験攻略のため、模擬問題を研究する府立高教員ら(城陽市・西城陽高)

副読本が「教科書」
 「ゆとり教育」を掲げた学習指導要領改定で、小学校から中学校、中学校から高校へと学習内容が先送りされ、授業時間数も削減された。半面、大学入試で問われる範囲に大きな変化はない。新しい指導要領で学んだ高校生が初めて受験する06年度入試でも、学力低下を恐れる京大は、現行の教科書では学習しない内容まで課す方針だ。

 ギャップが広がる中、旧指導要領の内容が盛り込まれた未検定の「教科書」を副読本扱いで使う公立高は少なくない。補習でいろいろな問題にあたらせ、手早く解く方法を数多く詰め込む、昔ながらの指導も行わざるを得ない状況だ。それでも「センター試験対策が精いっぱいで、大学別の対策はお手上げ」(府立高校長)。この現状を予備校流のマニュアルで打開しようというのが府教委の思惑だ。

脱マニュアル化へ
 ところが、難関大は「脱マニュアル」へと踏み出している。

 「円周率が3.05より大きいことを示せ」。この問題が03年度の東京大理系の前期入試で出題され、話題を呼んだ。

 「パターンに当てはめるだけでは解けない問題を出したいと考えている」。駿台予備学校が大阪市内で開いた会合で、ある難関大の担当者は06年度の出題のねらいを説明した。別の国立大担当者は05年度入試の出来の悪さから「時には1−2時間、一つの問題を考える。そんな練習が足りない」と嘆いた。高校の現状とは裏腹に、大学側は思考力や表現力など学力を多角的に見ようとしている。

 これに対し、予備校は「オーソドックスな問題を何度も反復練習させる。それが数学的なひらめきを生む」(駿台予備学校西日本教務部)と、難関大攻略にも自信を見せる。マニュアル化できない力を見ようとする大学と、それをもマニュアル化しようとする予備校、そして高校の「いたちごっこ」が続く。

[京都新聞 2005年9月29日掲載]

教科指導力充実事業
 府教委が「授業の達人」養成事業と位置づけ、本年度の目玉として実施。府立高教員から国語と数学、英語各20人と化学10人を選び、大手予備校講師の講義を受けるほか、国公立大2次試験向けの模擬問題を作成する。

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