The Kyoto Shimbun

第4部 受験狂騒曲(3)

第2期ブーム 親の不安 私立受け皿に ゆとり教育 効果疑問で

 「みんな夏にはどんなことをするかな。お父さんやお母さんとどんな遊びをしたかな」。塾講師の問いかけに、子どもたちは「はーい」と元気よく手を挙げる。黒板に向かうのは、5、6歳の幼稚園児たちだ。イラストが描かれた机上のプリントに「私立小入試直前完成特訓」という不釣り合いな漢字が躍る。遊びのように見えるが、季節の知識を養う「特訓」の一つだ。

 ペンや色折り紙の中から、指示した品物を持って来させる「買い物ゲーム」で記憶力を養う。実技テスト対策として教室内のマットで運動も指導する。合否を大きく左右する面接対策には保護者が最も期待を寄せ、面接の際の服装まで相談する。

「参入効果」塾にも
 京都の各私立小学校は過去の入試問題を公表していない。出題傾向を分析し、本番を想定した「訓練」が合否の鍵を握るとされるだけに、保護者からは「塾のノウハウがないと受験は無理」という声も漏れる。

 同志社、立命館両小の来春開校を前に、今年はどの塾も例年以上のにぎわいをみせている。「既存の私立小でも2割ほど志願者が増えている。2校の参入効果で、京都はバブル期に次ぎ第2期お受験ブームを迎えた」。京都市内で約30年の指導歴を持つ幼児学習塾の佐藤謙一代表は話す。

間近に迫った私立小受験に向け、学習塾で学ぶ幼稚園児たち。再び「お受験」ブームがやってきた(京都市中京区)

一貫教育で質PR
 ブランド力のある4年制大を頂点にした一貫教育が、両小の最大のセールスポイントだ。ともに小学校から系列の中学、高校、大学への道を、内部推薦という形で保障している。

 「受験を念頭に置いた今の教育が、スキルやテクニックを重視した狭い学力指導に偏らせている。受験の弊害に縛られない、質の高い一貫主義教育を目指す」。同志社小校長に内定している鈴木直人・同大教授は力を込める。「良心と豊かな人間性を備えた同志社人を育てる」

 対照的に「立命館の枠から飛び出してもらってもいい」と言い切るのは、立命館小校長になる後藤文男・前中高校長だ。小学校から高校までの12年間を4年ずつの「ステージ」に分け、現行の内容をはるかに超える昭和40年代の学習指導要領をベースにした独自の教科書も作成する。大学までの内部進学枠は設けるものの、国立の超難関大受験でも勝負できる「新しい形の進学校を目指す」という。

加速する低年齢化
 あえて系列校を目指さない選択もある。5歳の長男と塾に通うある母親は、同志社、立命館以外の小学校を受験させるという。公立小では先生や同級生の質や意識に不安がある。しかし、「私自身がそうだったように、私学の一貫校でエスカレーター式に上がれる道があれば、子どもは必ず楽な方を選ぶ」。長男には、大学受験という厳しい経験をさせたい、と言い切る。

 同立2小の開校で迎えた第2期お受験ブームは、ますます受験の低年齢化を加速させる、と佐藤代表は見る。

 「それだけ、『ゆとり教育』や学力低下に対する不安が大きいということかもしれない」

[京都新聞 2005年10月1日掲載]

私立小開校ラッシュ
 近畿圏では2006年4月の同志社、立命館両小開校をはじめ、関西学院大(兵庫県西宮市)が08年4月、関西大(大阪府吹田市)も09年度をめどに小学校を開設。京都でも洛南高(南区)が付属小を設ける予定。

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