The Kyoto Shimbun

第4部 受験狂騒曲(4)

逃がさない 生徒のやる気 引き出せ 全入時代で教師ら腐心

 「いややなぁ、また蚊にやられたわー」。京都府立桂高(京都市西京区)内にある農場では草花クラブの1、2年生約20人がにぎやかに、世界最小のアジサイ「織姫」を植え替えていた。同クラブは織姫など11種類の「高校生がつくったアジサイ」を全国に販売する。

クラブ活動で自信
 数年前、出荷数を確保するため、福祉施設との共同栽培を始めた。世話をする障害者の姿を見て「葉が落ちると、水やりなどがしにくい」ことに生徒が気づいた。ならば、葉の落ちないアジサイができないか。こうして生まれたのが、世界初の常緑性のアジサイ「桂夢衣」だ。

 3年の小泉佐希子さんは昨夏、こうした取り組みを全国大会で発表した。「しんどかったけど楽しい体験だった」と話す小泉さん。片山一平教諭は「あの発表で随分、自信をつけた」と目を細める。小泉さんは先ごろ、人物重視で選抜するアドミッション・オフィス(AO)入試で私立の美術系大学に合格したばかりだ。

草花クラブの生徒たち。アジサイの品種改良などを通じて社会に貢献している(京都市西京区・桂高)

高まらぬ学習意欲
 少子化の中、定員割れの私立大は過去最多となり、選ばなければ誰もが大学に入れる「大学全入時代」が迫っている。受験を「ニンジン」に子どもたちを走らせにくい現状で、生徒の学習意欲をどう奮い立たせ、社会をたくましく生き抜く力をつけていくか。必ずしも進学を売り物にしていない高校が共通して抱える悩みだ。

 桂高も例外ではない。

 9月下旬、契約しているベネッセコーポレーションの担当者が同高を訪れた。同社は生徒の学習習慣や意識、学力到達度などを「定点観測」している。

 調査結果は今回も芳しくなかった。中学時代の自宅学習時間が「30分以下」だった生徒が約6割おり、今でも約3割が「30分以下」と回答。進路について「未定」とした生徒が2年生で17.3%、3年生でも6.6%いた。大半のデータが府や全国の平均を下回っていた。

「社会貢献実感を」
 「しんどいことから逃げることばかりを考える生徒が多い。生徒をふやけさせる学校であってはならない」。教育企画部長の小島博幸教諭らが授業改善に乗り出したのは2年前。「結局、授業の面白さに触れさせ、生徒をやる気にさせるしかない」との考え方からだった。

 生徒による授業アンケートの結果はすべて冊子にまとめ、先ごろ、全教員に配った。「ほかとの比較がないと教師は本当に反省しない」との理由からだ。

 一方、学ぶ目標を明確にさせようと、進路を考えさせる時間として「To Be講座」も始めた。早々と専門学校志望を口にする生徒が多いことを「学習からの逃避傾向の表れ」ととらえ、講座の中では「資格も取得できないような専門学校は徹底的にたたく」(小島教諭)内容を入れ、生徒を挑発している。

  勉強せざるを得ない状況に生徒を導いていく手法は「強引」にも見えるが、小島教諭は明快だ。「今、自分が社会に貢献していると実感できる人生を、生徒には送ってほしいから」

[京都新聞 2005年10月2日掲載]

高校生の自宅学習時間
 ベネッセ教育研究開発センターの調査によると、「ほとんどしない」が男子32.6%、女性26.3%。特に、進路が多様な高校では7割近くの生徒が平日・休日ともほとんど自宅学習をしていない。

▼前の記事次の記事▲

各ページの記事・写真は転用を禁じます
著作権は京都新聞社ならびに一部共同通信社に帰属します
ネットワーク上の著作権について―新聞・通信社が発信する情報をご利用の皆様に(日本新聞協会)
電子メディアおよび関連事業における個人情報の取り扱いについて
記事に対するご意見、ご感想はkpdesk@mb.kyoto-np.co.jp
京都新聞
京都新聞TOP