The Kyoto Shimbun

第5部 子どもからのSOS(2)

運動が苦手 遊び文化の3条件消え 身体能力の二極化加速

 梅津小(京都市右京区)の体育館で、5年3組の児童が1チーム3人で戦うバスケットボール型ゲームに熱中していた。

 作戦タイム。相手にリードを許した赤チームは真剣そのものだ。「後半はどうする?」「相手のパスを止める」「よし」

 ゲーム再開。相手のパスをカットし、そのままドリブルシュート。「やったー」。3人の呼吸も合い始め、逆転した。バスケットボールが嫌いだった子も「今は好き」と笑顔を見せた。

運動をしない子が増えている中で、楽しさを教える工夫が体育の授業に求められている(京都市右京区・梅津小)

体育で新たな試み
 教務主任の細辻浩教諭は「苦手な子でも3人なら必ずボールに触れられる。日常的に運動している子と、そうでない子に二極化している中で、運動好きの子に育てるための対応が体育の授業には必要です」と話す。

 子どもの体力低下が著しい。2004年度の文部科学省調査では、小学4年男子の50メートル走の平均記録は、20年前の4年女子の水準まで落ちた。

 梅津小の6年男子の場合、記録の範囲は8秒台前半から10秒台前半で、20年前と変わらない。しかし、記録の散らばり具合のグラフでは、山型のカーブのピークが年々低くなり、二極化を示す「ふたこぶ」型に近づいてきた。運動の苦手な児童の増加が「体力低下」の正体だ。

 その上、「まっすぐ走れない」「陸上は得意だが、球技が苦手」(小学教諭)、「全国大会に出場したサッカー部員に泳げない子が数人」(中学教諭)など運動能力の偏りも目立つ。

「未来の学力」養う
 京都市教委の佐藤真一指導主事は「塾などで忙しく、友人と時間も合わない。1人で遊ぶにしても外は危ないから室内でゲームをする。遊び文化の条件である『3間』、空間と時間、仲間が失われたことが要因」と説明する。

 梅津小では週末を利用し、地域住民らがスポーツを指導する「地域児童クラブ」も始めた。学校と地域が「3間」を提供することで、子どもが運動に親しめる環境をつくっている。

 京都教育大の野原弘嗣名誉教授は「運動を通じて自信が高まり、対人関係を円滑にするための社会的な能力も養われる。運動は学習意欲や知識を活用する力など『未来の学力』につながるのではないか」とみる。

 運動で身体感覚を高め、脳に刺激を与える取り組みもある。

脳を鍛える効果も
 陵ケ岡小(山科区)の花田純香教諭は2年前、2年生に身体感覚を鍛える授業を試みた。

 かかとやつま先など、足のあちこちを使って歩かせる。場所もマットや砂場を選び、足裏の感覚を意識させる。平均台などを使ったコースを速く通り抜ける体の使い方も、グループで考えさせた。花田教諭は「仲間とかかわる中で、自分の体を知りコントロールできる感覚を身につけてほしかった」と話す。

 砂川小(伏見区)の茨木則雄教諭は明快だ。「足からの感覚は特に脳の発達に影響を与えるとされる。身体感覚を鍛えることは脳を鍛えることであり、学力を左右する脳の『引き出し』を増やすことではないか」

[京都新聞 2005年12月17日掲載]

文科省の体力・運動能力調査
 小学4年男子の立ち幅跳びの結果は20年前に比べ、12.3センチ低下し、20年前の4年女子と同じ。ソフトボール投げの飛距離も3.4メートル短い。女子も1.8メートル下回り、男女とも1割以上低下。

▼前の記事次の記事▲

各ページの記事・写真は転用を禁じます
著作権は京都新聞社ならびに一部共同通信社に帰属します
ネットワーク上の著作権について―新聞・通信社が発信する情報をご利用の皆様に(日本新聞協会)
電子メディアおよび関連事業における個人情報の取り扱いについて
記事に対するご意見、ご感想はkpdesk@mb.kyoto-np.co.jp
京都新聞
京都新聞TOP