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ユニットケア(2)新型特養の戸惑い 「施設ありき」では駄目
8畳余りの広さの個室には、ベットのほかに入居者が持ち込んだソファ、たんす、額縁、人形などが並ぶ。ちょっとしたワンルームマンションのよう。個室に囲まれてリビングがあり、10人で共同使用する。洋室に台所、畳敷の部分もあり、ゆったりした雰囲気だ。 滋賀県多賀町、犬上川のほとりに立つ特別養護老人ホーム・多賀清流の里。2004年に開設した「新型」と呼ばれる典型的な特養だ。相部屋のうえに、一人あたりのスペースが6畳余りの「従来型」特養とは大きく設備が違う。
単に分けただけ
厚生労働省の方針で、03年度以降に建設された特養は原則的に新型だ。京滋で27施設ある。ユニットケアの導入が義務化されている。部屋に間仕切りをしたり、廊下を共用居間に使うなど工夫しなければユニットケアができない従来型よりも恵まれている。 しかし「当初は職員の戸惑いが大きかった」。同ホーム介護課長の小川義三さんは話す。職員の中にはユニットケア経験者もいたが、「単にユニットに分けただけ」で食事、排せつ、入浴の三大介護に職員が振り回される日々が続いた。「ユニットごとの設備が整っているだけに、ユニットにお年寄りを閉じこめているのではないか−という疑問さえ出てきた」と振り返る。 ◇ 同じような問題を抱える新型特養は珍しくない。関係者からは「新型は、高齢者が個室にこもりがちになる」との声もある。 「従来型は、ユニットケアの導入自体が大変なので、職員の意欲は高いし、うまくいくと目に見えてお年寄りが変わるので喜びも大きい。しかし、新型は施設ありきで出発するので、形だけのユニットケアに陥ることが少なくない」。京都府内のある新型特養施設長は指摘する。「ハード(設備)がいいに越したことはないが、ソフト(介護の質)の良さとは比例しない」とも。
問われる職員の能力
京都市伏見区の特養・同和園は従来型でユニットケアを導入したが、昨年1月の建て替えで新型になった。「当初は従来型でのユニットケアほどうまくいかなかった。ハードに頼った介護になっていた」とユニット主任の坂田知美さん。「ユニットに分けるのは個別介護の手段にすぎないことに職員があらためて気づき、すべてを見直した。個室はお年寄りを見えにくくする面があるので、職員の能力がより問われる」 ◇ 多賀清流の里でもユニットケアの実をあげるため、お年寄り一人ひとりの記録シートを独自につくる工夫を凝らした。その人の1日の流れ、これまでの生活、できること、できないことなどを記録した。「個別ケアは過剰ケアではない。本人ができることにまで、職員が手を出しさないようにした」 ユニットを「家」に見立てて、他のユニットの人と交流する「施設内デイサービス」という取り組みも始めた。いわゆる全体でのレクリエーションだが「各ユニットが独立している新型特養では案外難しい」という。
小川さんは「どんなに整った施設でも、本人にとって自宅に勝るものはない。施設に入った時点でお年寄りはショックを受けている。まずマイナスからのスタートということを介護者が認識し、ゼロに戻すことから始める意識を持たないと、介護側の自己満足、お仕着せのユニットケアになりかねない」と実感を込める。
[京都新聞 2006年3月18日掲載]
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