The Kyoto Shimbun
ユニットケア(3)広がる可能性 終末期から在宅支援まで

 大みそかの朝だった。折りから降り始めた雪が辺りを純白に染める中、トモコさん(94)=仮名=は静かに息を引き取った。家族とユニット職員らが見守る中で−。

廊下で囲碁を楽しむ短期入所(ショートステイ)のお年寄り
廊下で囲碁を楽しむ短期入所(ショートステイ)のお年寄り。滞在日数によってユニットを分けている(長岡京市・天神の杜)

この施設で死にたい
 長岡京市の特別養護老人ホーム「天神の杜(もり)」は京都府内初の新型特養として2003年に開設された。間もなく、末期ガンの入所者が「この施設で死にたい」と言い出した。ユニットケアに携わっていた職員からも「最後までみとりたい」との声が出た。以来、3年近くで亡くなった10人のうち、7人を施設で見送った。

 トモコさんも、その一人だ。重度の認知症に加え、胃がんを患った。亡くなる2カ月前には肺炎で入院した。しかし、家族は「病院よりも住み慣れた施設で」とターミナルケア(終末期の介護・看護)を希望した。

 ターミナルケアは「チームケア」でもある。ユニットの職員だけでなく、施設の看護師、管理栄養士、嘱託医が何度も会議を開き、24時間体制の見守りや緊急時の医療対応などを決めた。家族の思いもあり、最後まで「口からの食事」を目指して工夫を凝らした。

 亡くなる直前、かつて図書館司書で語学も堪能だったトモコさんは「サンキュー」とつぶやき、笑顔をみせた。「ユニットケアは職員と入所者が近い関係にあるので、職員の側も、みとりはつらい。でも、ユニットケアが目指す個別ケアは、その人が望むなら最後まで寄り添うことまで含まれるはずだ」(五十棲恒夫施設長)。

ノウハウがない
 新型特養は個室完備のため、ターミナルケアはやりやすい面がある。だが「末期は病院で」という施設は少なくない。「特別の夜勤体制などで、おカネがかかる」という声のほか、「やりたい気持ちはあるが、ノウハウがない」と話す介護関係者が多い。

 「末期は特に、本人の意思確認ができないことが多いので、どこまでどんな看取りをすればいいのか、いつも手探り」。天神の杜の生活相談員、村山道代さんも言う。

 入所時に家族も含めてターミナル時の意向を聞いたり、本人が元気なうちから何げなく「どんなふうに死にたい」と聞いて記録するなど、さまざまな試みもしている。これまでのみとり経験から「ターミナルケアマニュアル」もつくったが、正解はない。

 国は4月から、ターミナルケアを行った介護施設に報酬を加算する仕組みを導入する。ターミナルへの取り組みは今後広がりそうだ。

     ◇

在宅復帰を目指す「老人保健施設」でのユニットケアは全国でも例が少ない
在宅復帰を目指す「老人保健施設」でのユニットケアは全国でも例が少ない(京都市北区・がくさい)
 ユニットケアは特養にとどまらない。在宅復帰や在宅支援のための介護サービスにも導入され始めている。

 昨年1月に開設した京都市北区の老人保健施設(老健)「がくさい」では、建設段階からユニットケアの導入を決め、9つの区画ごとに共同居室を設けた。

福祉ネットワーク
 認知症が専門の中島健二施設長(京都府立医大名誉教授・神経内科)は「認知症患者は環境の変化で不安定になりがち。ユニットケアにより、従来の老健より職員とのかかわりを濃密にすることで、症状が安定する効果がみられる」と話す。

 天神の杜などは、特養だけでなく、短期入所(ショートステイ)にもユニットケアを導入している。デイサービス(通所介護)でも、介護度によって少人数に分ける施設も出てきた。

 ただ、老健や短期入所は、特養のような「終(つい)のすみか」ではないため、「せっかく症状が安定しても、介護者がいないなどの理由で自宅に戻れず、他の老健や短期入所を渡り歩く人も多い。それで症状が悪化してしまう」との問題もある。

 そこで、老健「がくさい」ではユニットケアと同時に、他の関係団体と連携し、在宅生活を支援するための福祉ネットワークづくりをすすめている。

 ターミナルからさまざまな施設の挑戦まで、ユニットケアの可能性は縦横に広がりつつある。


[京都新聞 2006年3月25日掲載]

▼前の記事介護のじかんTOP次の記事▲

各ページの記事・写真は転用を禁じます
著作権は京都新聞社ならびに一部共同通信社に帰属します
ネットワーク上の著作権について―新聞・通信社が発信する情報をご利用の皆様に(日本新聞協会)
電子メディアおよび関連事業における個人情報の取り扱いについて
記事に対するご意見、ご感想はkpdesk@mb.kyoto-np.co.jp
京都新聞
京都新聞TOP