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ユニットケア(4)課題を超えて 工夫、葛藤が続く現場
昨年12月に京都市で開かれた「ユニットケア全国実践者セミナー」。全体シンポジウムでは、ユニットケア導入に向けた京都独特の研修事業が取り上げられ、全国から集まった介護関係者に注目された。
具体法をまとめて
実施しているのは京都府と京都市の各老人福祉施設協議会(老施協)。職員だけでなく、管理者もユニットケアを実践的に学ぶのが特徴だ。特に市老協は、市内のすべての特別養護老人ホームに参加を義務付けた。 「ユニットケアの成否はソフト(職員の介護能力)にかかっている」と市老施協会長の山田尋志さんは強調する。 山田さんが施設長を務める特養「ももやま」(京都市伏見区)では、5年前からユニットケアを導入している。しかし「ユニットケアで具体的にどんな介護がいいのかというと、どこも試行錯誤の状態。研修内容も確立していない」と打ち明ける。 「集団入浴より個別入浴の方がいい、というレベルで議論が止まっている。個別入浴でどんな介護をするのかという具体論がない」と、より高いレベルの介護を目指す姿勢をみせる。 そこで、山田さんら全国の先駆的な介護指導者が連携してNPO法人(東京都認証)を結成、ユニットでの個別ケアの具体法をまとめた教材をつくる取り組みに乗り出した。「全国の良いユニットケアの具体例を集め、映像や文章のテキストをつくる。それを活用してユニットケアの指導者を育てたい」と意気込む。 ◇ 一方、京都府北部では昨年からユニットケアに取り組む特養同士が、介護内容を互いに評価し合う全国的にもユニークな試みがすすんでいる。
質の格差広がる
この「ユニット・イン・北京都」に参加するのは6施設。一つの特養に、他の特養の職員が順番に泊まり込み、朝から夜間介護までを細かく点検して10点満点で評価する。評価を受ける職員は「良い意味で緊張感がある」といい、評価する職員は「いい部分は参考になるし、自分の介護を反省する材料にもなる」と受け止める。 参加する特養「虹ケ丘」(与謝野町)施設長の土居正志さん=京都府老施協・ユニットケア研修責任者=は「現場のユニットケア実践者同士が切磋啄磨(せっさたくま)することで、ケアのレベルを高めたい」と狙いを話す。これを参考に、府中部の特養3施設が「ユニット・イン・中京都」を結成するなど、取り組みが広がりをみせている。 滋賀県でも特養関係者でつくる「ユニットケア研究会」が昨年から職員と管理者の研修に取り組んでいる。会長で、特養「多賀清流の里」(多賀町)施設長の藤居眞さんは「県内の多くの施設にユニットケアを通した個別ケアが広がってほしい」と話す。 ただ、京滋とも「熱心な施設がある一方、ユニットケアはカネがかかるから−と見向きもしない特養がある。老人保健施設や療養型病院にいたっては、ほとんど導入されていない。介護の質の格差が広がっている」と関係者は口をそろえる。 従来型特養でのユニットケアは千差万別のため、導入実数は不明だが、京都では「北部に比べて南部は消極的」といった地域差もみられる。 ◇ ユニットケアを導入する施設は、やり繰りして国の基準(入所者3に対して介護者1)を上回る職員を配置している。「最低でも2対1でないと個別ケア無理」というのが現場の声だ。
響く報酬切り下げ
そんな中、新型特養(2003年度以降建設)は、昨年10月に介護報酬が切り下げられ、運営に四苦八苦している。 全国新型特養推進協議会の近畿ブロック長で、特養「同和園」(伏見区)園長の橋本武也さんは「懸命にユニットケアに取り組む施設ほど、費用の持ち出しで苦しんでいる。その上、報酬を下げられれば、常勤職員の削減など介護の質の低下につながりかねない」と憤る。 認知症のお年寄りが少人数で暮らす「グループホーム」に始まり、4月から制度化される「小規模多機能施設」。そして介護施設での「ユニットケア」。いずれも、施設を自宅の雰囲気に近づけ、個々の高齢者の思いに沿う「小規模・個別介護」を目指す流れから生まれてきた。 介護費用の抑制という国の方針が強まる中、現場の工夫と葛藤(かっとう)は続く。
[京都新聞 2006年4月1日掲載]
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