Kyoto Shimbun

焦点化指導 全員理解できる授業に

 ある学年の担任が集まり、各教科の進み具合について話し合っていた。漢字の練習教材が話題になった時だ。ベテランの学年主任が「えっ、そんなところまで進んでるの?」と、驚きの声を上げた。若手のクラスが、かなり先まで行っていたからだ。

「焦点化指導」をテーマに開かれた研究授業

 「一番できない子の顔が頭に浮かんでる?」。学年主任の口調は少し厳しくなった。「その子がテストで80点とれるような指導を考えて」

 学習でつまずく子には、家庭に社会的、経済的な問題があるケースも少なくない。その子が背負う社会的条件まで心に留め、何が必要なのか考えながら授業を組み立てる。そうすることこそ、全員が分かる授業につながる−。京都の教育現場で昔から大切にされてきた「焦点化指導」という考え方だ。ただ最近は京都でも、できる子を伸ばす指導が重視され始めている。

 「伸びる子を伸ばそうとするあまり、置いてけぼりになる子をつくったら絶対にあかん」と副教頭は話す。「そのためには家庭にまで入り込んで、その子を徹底的に知る。時には親も教育しないと…」

 朝、登校してこない子どもの自宅に走り、親の代わりに先生が布団をはがすこともある。昼夜を問わない家庭訪問の頻度には驚かされる。ある先生は「親ができないことを学校がどこまでするのか、葛藤(かっとう)もあった」と明かす。「でも、学校に来てもらわないと何もしてあげられない…」

 半年以上自宅に通った子が、ある朝自分から教室に現れた。その姿を見た瞬間、担任は胸が震えた。そして指導案にこんな一文を寄せた。

 「子どもと向き合う地味な取り組みの99は正直、しんどいことだらけです。でも、あとの『1』は、99のしんどさを一気に吹き飛ばす、すばらしい『1』です」

[2006年8月1日掲載]