Kyoto Shimbun

野外学習 思い出は「心の宝物」に

 5年生にとって最大のイベントは、三重県の京都市野外教育センター「みさきの家」で行われる2泊3日の野外学習だろう。

 賢島に向かう電車内、お弁当を広げて子どもたちは早くも興奮気味。ところが、到着した途端、雨が降り出した。

飯ごう炊さんを通じ友達と協力することの大切さを学んだ子は多い(三重県志摩市)

 ゲン=仮名=たちにはある計画があった。夜のキャンプファイアーの残り炭を手に入れること。「磨けば『黒いダイヤ』みたいに光る。一生の思い出になるぞ」と出発前、担任から聞かされていた。

 その夜は雨のため、プレイルームでのキャンプファイアーになったが、皆で準備してきたゲームやダンスは大成功だった。疲れた子どもたちが寝息を立て始めても、先生は1−2時間おきに部屋を回る。おねしょが心配な子を起こし、調子の悪い子に添い寝し…。眠れないまま、最初の夜が明けた。

 「朝早くプレイルームに入って紫明小の人たちを起こした人、手を挙げろ」。朝の空気を切り裂くような先生の声が飛んだ。最初にゲン、続いて数人が手を挙げた。早起きして残り炭を探しに行ったら、雨で宿舎が変更になった別の小学校の人たちを起こしてしまったのだ。「ごめんなさい」。皆で頭を下げた。

 その日の飯ごう炊さんで、ゲンたちは火の係だった。たきぎを組み、火を付ける。地面に正座して新聞紙で風を送り続けた。背中の汗じみがどんどん大きくなる。40分後、飯ごうのフタを開けると、ふっくらと炊けた白いご飯が顔を出した。

 片付けが終わってもゲンはかまどのところにいた。残り炭をそっと握り、担任に「もらってもいい?」と聞いた。

 翌日、ゲンは退所式でこうあいさつした。「思い出はわたしたちの心の宝物になりました」(文中敬称略)

[2006年8月5日掲載]