Kyoto Shimbun

合唱コンクール 「みんなが一つ」に喜び

 やれるだけのことは、やった。いよいよ、これまでの成果を発揮する時が来た。

 秋の最大イベントである学校祭の初日。3年男子のシン=仮名=は、クラス合唱の指揮者として、合唱コンクールの舞台に上がった。

「絶対金賞」。腕や手のひらに目標を書き合い、一体感を高める

 コンクールは、クラスの団結力を示せる数少ない機会だ。卒業生の多くが一番の思い出に挙げる。「みんなに信頼される人間になりたい」。先頭に立つタイプではなかったシンは、思い切ってクラスを束ねる大役を買って出た。

 野球部では4番を任されていた。運動には自信があるが、音楽は…。他のクラスの指揮者は、吹奏楽部や前の学年で指揮を経験している。「自分で立候補したんやし、負けていられない」。夏休み中も自宅にテープを持ち帰って、一人でタクトを振った。

 クラスには、自分のように音楽が苦手な体育会系もいれば、大好きな女子もいる。勉強のできるヤツ、部活になると張り切る男子、学校を休みがちな人…。男子は恥ずかしがって声が出ないが、女子は「ミニ先生」になって何かと指示してくれる。クラスメート一人一人がよく見えた。なんとなく一緒に過ごしてきたけれど、「中学を卒業したら、もう、みんなで歌うことができない」。そう思うだけで、責任の重さを感じた。

 本番前、野球部ばりの円陣で気合を高めた。曲が進むにつれて、みんなの声が大きくなった。「指揮がずれる」と指摘された四拍子から二拍子に変わる部分もクリアできた。満足できる合唱だったと思う。祈るように結果を待ったが、金賞はかなわなかった。

 「結果は残念やけど、みんなが一つになれて、いい経験になった。ちょっとは自分も成長できたんかな」。泣き崩れる女子の横で、シンは努めて平静を装った。

[2006年10月17日掲載]