Kyoto Shimbun

道徳の時間 自らを見つめて成長

 8月下旬。2年生の道徳の時間で、担任の先生は、クラス全員に物語を印刷したプリントと、短冊型のピンク、水色の画用紙を配った。

部活動に励む生徒たち。身近な題材が自分を見つめる素材になる

 物語は、架空の中学校のバレーボール部が舞台だ。上級生の高圧的な態度に不満を募らせる下級生を代表し、主人公の1年生部員が先輩に意見を言おうか、言わないでおこうかと揺れる心情を描く。

 「みんなならどうする」。先生の問いかけに、意見を言うと思う生徒はピンク、言わないと思う生徒は水色の札を挙げる。水色が大半を占め、ピンクはわずかだった。

 「誰かが代表して言わなあかんと思う」「そんなん、かっこつけや」

 今回の狙いは、相手の立場を尊重する大切さに気づいてもらうことだ。この物語を選んだのには理由がある。数日前、先生は3人の生徒から「部活動がうまくいかない」と悩みを聞いていたからだ。

 夏休み後のこの時期、多くの部で3年生が引退し、2年生が中心メンバーになる。キャプテンになったり、部の運営を考える立場になり、「最も精神的に成長できる時期」と先生は言う。

 しかし、「後輩が付いてきてくれない」と焦るあまり、大声を張り上げてしまうこともある。「こうしてはだめ、というだけでは生徒に届かない。自分の立場に置き換えられる身近な素材で、自らを見つめる時間にしてほしかった」と話す。

 「先輩が引退し、みんなにも後輩がいる。キャプテンはしんどい時もあるよね」。先生は語りかけた後、「何か悩んでいる人はプリントに印をして」と呼びかけた。9人が印を付けていた。「さあ、悩みを聞いてあげないと」。先生にとっても、道徳は生徒を見つめる大切な時間になっている。

[2006年10月27日掲載]