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苦境の「ブラジル人学校」 不況下、国の支援が必要

社会報道部・新里健
プレハブ校舎で授業を受ける子どもたち。日本の公立校になじめず、ブラジル人学校が貴重な学びの場となっている(滋賀県愛荘町のコレジオ・サンタナ)

 製造業を中心とする「派遣切り」で昨秋以降、多くの日系ブラジル人が仕事を失う中、その子どもたちが通う私営の「ブラジル人学校」も苦境が続いている。生徒急減と資金不足に直面した滋賀県など各地の学校は、政府に公的援助を求める活動を強めている。政策として外国人労働者を受け入れながら、ブラジル人学校への援助がない今の状況は、日本が外国人を「使い捨て」にしているに等しい。

 「子どもたちのために頑張ってください」。滋賀県愛荘町のブラジル人学校「コレジオ・サンタナ」には1月以降、激励の声とともに100キロ近い米や野菜が届いている。運営難を知った県内外の会社員や農家からだ。日系2世の中田ケンコ校長(52)は「思いがけない贈り物。給食の材料代に悩まずに済む」と喜ぶ。

 生徒数は昨秋から半減して45人になった。うち15人は親の失業で授業料を払えない。親からは「学校で掃除や調理の仕事はないか」「ミルク代を貸して」との相談電話もかかる。窮状を察し、中田校長は1月から授業料を3割下げ、教師の月給も半分の8万円にした。代わりに夜の保育時間を短縮し、夕方の給食をやめざるを得なかった。

 中田校長は「赤字だが、学校経営をやめるわけにはいかない。行政にも助けてほしい」と訴える。

 ブラジル人学校が助成金を受けられないのは、法律で「私塾」に分類されているからだ。ほとんどの生徒は電車やバスの通学割引も受けられない。それでも、日本で暮らすブラジル人の子どもの約2割がブラジル人学校に通っているとみられる。「日本の公立校では語学指導が十分受けられない」ことなどが理由だ。

 在日ブラジル人学校協議会(埼玉県)によると昨年11月以降、全国39の加盟校で生徒が5割減った。滋賀県の調査でも県内4校で生徒が半減、計308人になった。

 協議会は2月5日、ブラジル人学校と生徒への緊急支援を求める要望書を内閣府に提出した。内容は▽公立校の生徒と同様の就学援助▽通勤定期と通学定期の差額を助成▽授業料に課される消費税負担の軽減−などだ。

 連名で要望書を出した市民団体「民族学校・外国人学校の制度的保障を実現するネットワーク」の田中宏龍谷大教授は「人手不足の時代に国主導で就労を認めたのだから、子どもの教育も国が支援すべきだ。公立校で日本語とポルトガル語を丁寧に教える体制づくりも急務」と話す。

 好景気で受け入れる時は「日本人」、不況で解雇する時や教育現場では「外国人」。国は、こうした「ご都合主義」を改めるべきではないか。急速な景気後退で生活が危機にひんしている今、生徒のよりどころとなっている学校の支援には十分な公共性があると思う。

[京都新聞 2009年2月17日掲載]

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