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自治体の震災がれき受け入れ 情報公開で不安解消を

社会報道部・竹下大輔
東京都に搬出するため、トラックのコンテナに積み込まれる震災ごみ。東京以外では受け入れを拒否する自治体が続出している(岩手県宮古市)

 東日本大震災で出たがれきなどの震災ごみの処理が進まない。受け入れ方針を示した自治体に苦情が殺到し、撤回する事例が相次いだからだ。これを受け環境省は先月調査で前向きな回答をした自治体名を非公表とし、京都府もこの方針を踏襲している。同省は「処理を前に進めるため」というが、原発事故では一連の「情報隠し」が放射能への不安をあおる結果になり、積極的な情報公開を求めたい。

 環境省の4月調査では全国572市町村などが受け入れ意向を示した。京都府も取材に対し5団体を公表、各団体も「困った時はお互いさま」などと答えた。しかし、新聞各紙で報じられると放射能汚染を懸念する苦情が相次ぎ、態度は一変した。

 そこで同省は「自治体名は非公表」を条件に10月に再度意向を調査。滋賀県は「全自治体が検討していない」と発表したが、京都府は「国の意向」を理由に市町村の回答内容どころか、回答した自治体数さえも公表していない。市町村側も会見やホームページで自ら公表したのは少数で、被災地への物資支援などの実績アピールには熱心だが、この件では沈黙を続ける。

 京都市は5月に「年間5万トンの受け入れが可能」と回答したが、600件を超える苦情が寄せられ、10月に「検討できない」と変更した。受け入れ方針を撤回した伊根町担当者も「地元ではない人の批判が多い」と打ち明ける。苦情に自治体が振り回されている観もある。

 結局、非公表にした10月調査でも、全国で54団体しか手を上げなかった。府内自治体に理由を聞くと「国の放射能の安全基準が明確でなく、住民理解が得られない」との答えが返ってきた。環境省は焼却時の安全基準を調査の回答締め切りの10月21日になって提示するなど後手後手の印象が強く、住民不安の払拭(ふっしょく)にはつながらないという判断だった。

 ただ、自治体側は住民理解を得ようとどこまで努力したのか。自ら動いた形跡はほとんどみられない。「基準が明確でない」というが、何が不明確で、どんな基準ができれば受け入れるのか。担当者への取材では、明確な返答はほとんど聞かれなかった。

 京都市はホームページで「運搬」「海面埋め立て」など不足する基準を具体的に示し、国に提案した。自ら回答内容を公表し、受け入れ条件を提示する姿勢は評価でき、他の自治体も見習うべきだ。

 府は「処理施設がなく、市町村の判断に任せる」と傍観にも見える姿勢だが、11月3日に被災地以外で初めて震災ごみを受け入れた東京都にも府と同様に焼却施設はない。都は民間施設に処理を委託し、次の段階で施設がある市区町村に受け入れを求める。市町村単独で手を上げると批判が集中するなら、いったん都道府県単位で引き受ける都の手法は、府でも参考になる。

 復興には震災ごみの受け入れが欠かせないが、このままでは2013年度までの撤去目標は不可能になる。受け入れを促進するには住民の安全確保と、不安解消のための情報発信が不可欠だ。自治体は国に責任をなすりつけず、受け入れに向けて住民に正面から向き合うべきだろう。

[京都新聞 2011年11月9日掲載]

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