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京都市の新景観政策 特例の公平・公正、議論を

社会報道部 広中孝至
島津製作所の工場再編に伴い、高さ規制を緩和する京都市の地区計画を認めた市都市計画審議会(京都市下京区)

 相次ぐ建築物の高さ規制の緩和で、京都市の新景観政策に不信感が出ている。個別物件の特別許可や、都市計画法に基づく地区計画変更で特例的に緩和を認める市に対し、市議会や専門家からはその基準や手法が分かりにくいとの指摘がある。厳しい高さ規制を求める一方、なぜ特別扱いなのか。「景観保全のルールが崩れかねない」との声もあり、あらためて公平、公正さを担保する議論が必要だ。

 7月30日の市都市計画審議会。中京区の精密機械メーカー、島津製作所が計画する三条工場の再編で、新社屋の建設予定地とされる敷地の一部が、現行20メートルの高さ規制から31メートルに引き上げられる市の地区計画案が議論された。

 「企業の私的な理由で緩和すれば、市民に示しがつかない」「行政と一部の経済関係だけが配慮されるのか」。計画案は賛成多数で可決されたが、「ものづくり拠点」としての機能を担保する必要性を強調した市の説明に、委員からは批判が続出した。

 反対した委員の一人、小伊藤亜希子大阪市立大大学院准教授(住居学)は「規制で不利益を被る人も多いはず。その中で市民合意を得て進めている政策を、市が安易に破るべきではない。これがきっかけでルールが崩れないか心配だ」と危機感を募らす。

 2007年9月にスタートした新景観政策は、町並みや眺望景観の保全、形成に向けて高さ規制を強化し、市街地のほぼ全域で31〜10メートルの6段階の高度地区を地域の特性に応じて設定。同時に規制の適用除外とする手法として個別の建築物の特別許可制度と、一定の地域で独自ルールをつくる地区計画制度も定めた。

 市がこれまでに特別許可を用いて高さ規制を緩和したのは京都大医学部付属病院の病棟建設など3例あり、今回の地区計画変更は、市が京都会館の建て替えを計画する岡崎地区に続き2例目だ。

 特例を認める基準について、市は「規制の一律的な運用は都市活動の硬直化を招く」として、場所の特性を踏まえ▽景観への配慮▽良好な住環境の整備▽都市機能の充実―の観点で判断するとしているが、基準としてはあいまいで、客観的指標を示せないところに不信の要因がある。

 都計審での批判に、市担当者は「高さ規制の考え方を十分に説明し切れていなかったため、今後もなし崩し的に規制緩和が続く印象を与えたのだろう」と話し、特例を認める際の考え方をより具体的に示すガイドラインの策定に乗り出している。

 市は12年度末で廃止する山ノ内浄水場跡地(右京区)への大学誘致でも、高さ規制20メートルを31メートルに引き上げる方針だが、多くの市民や企業が規制を受け入れている現状を踏まえ、どう理解を得ていくのか。特例の必要性を市民と共有できなければ、「ご都合主義」のそしりはまぬがれない。

[京都新聞 2012年8月15日掲載]

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