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ひこにゃん訴訟和解 増す存在感、どう保つか

彦根支局 田中俊太郎
街の至るところで、ひこにゃんの旗がたなびく。観光や経済への貢献は大きい(彦根市本町2丁目)

 彦根市の人気キャラクター「ひこにゃん」をめぐり、市が原作者らの類似グッズ販売中止を求めた訴訟は11月、大阪地裁で和解が成立し、5年にわたる両者の対立が一応の決着をみた。キャラ活用の在り方を市と原作者が争った異例の経緯は、想定を超えるひこにゃん人気の広がりと、彦根観光にとっての存在の大きさを強く印象づけた。

 「『ひこにゃんは彦根から始まったらしい』と伝説になるんじゃないか」。先月22日、獅山向洋市長は和解の喜びを語る中で、ひこにゃんが市より有名になっている状況を冗談を交えて言い表した。

 ひこにゃんは2006年、翌年の彦根城築城400年祭PRキャラとして誕生。愛らしい着ぐるみも人気を高め、関連グッズが爆発的に売れた。市は人気を生かそうと祭終了後もキャラ使用を続けた。

 争いの火種となったのは06年に市側が原作者側の広告代理店と結んだ契約。著作権を得たが、元のイラストからグッズなどを作る翻案権と利用する二次的著作物利用権の帰属を明記していなかった。

 原作者側は、グッズ使用許可など市側の継続使用に反対を訴え、07年末に市の著作権利用の一方、似たキャラ「ひこねのよいにゃんこ」の絵本などを原作者に認める調停が成立した。だが、双方のグッズが混在し、市は10年6月、原作者らの類似グッズが市の著作権を侵害していると販売差し止めの仮処分を申請、11年3月には損害賠償などを求めて大阪地裁に提訴した。

 一連の争いの背景には、全国区のひこにゃん人気と経済効果の大きさがある。彦根城の観光客は400年祭以前より2〜3割増を続け、家族連れや若者に広がった。市によると、11年度のひこにゃんグッズ総額は約6億8千万円、10年7月から有償化した業者の商標使用料は約1900万円に上る。「ひこにゃん応援事業」へのふるさと納税も10年度564万円あり、その活用は観光面を中心として市に欠かせなくなっていた。

 今回の和解は、翻案権や二次的著作物利用権が市に帰属すると明記し、原作者側の類似グッズ製造販売の禁止と解決金支払いなどで合意した。市は翻案権を確保して「安心して利用できる」とする一方、アニメ化などの同意権を保持した原作者側の弁護士は「歯止めをかけられた」と説明する。市はあらためて活用法を検討する意向だが、「ひこにゃん自身が独自の人格を持つようになっている」(獅山市長)と新展開には慎重だ。

 ひこにゃん人気の理由にデザイン性と着ぐるみ文化による親しみやすさを挙げる谷口伸一滋賀大教授(情報工学)は、景気低迷で「ゆるキャラのビジネスも厳しい」と人気持続の難しさを指摘する。ファンが親しむイメージとともに彦根観光を支える魅力をどう保つのか、市は活用により大きな責任を負う。

[京都新聞 2012年12月5日掲載]

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