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薬物依存症からの回復 「支える場所」もっと必要

京田辺・学研総局 冨田芳夫

「このオクラおいしい」。仲間たちと食事する入所者。季節の移ろいを感じながら、地域の中で回復を目指す(木津川市木津)

 薬物使用者などを対象に刑の執行を一部猶予する新制度の導入を盛り込んだ、刑法改正など関連法が3年以内に施行される。再犯率が高い薬物依存者を社会に戻して専門的な治療を受けさせ、立ち直りを支援する狙いだ。今年6月、山城地域では初めて、薬物依存からの回復を支援する施設「木津川ダルク」が木津川市に開設された。新制度の導入で、こうした支援施設など社会の「受け皿」の拡充が求められることになるが、地域での理解が十分に進んでいるとは言えない。

 「偏見でみたらあかんけど、『薬物』と言うとどうしても危険なイメージがある。周辺住民からも不安という声が寄せられる」。ダルクのある木津地区の谷原圭太郎地域長が言う。「施設見学をしたが、どんな人が入っているかわからず、職員の説明だけでは安心できない」という。

 木津川ダルクは、さまざまな依存症からの回復支援に取り組むNPO法人アパリ(東京都)が開いた。空き家だった2階建て民家を活用した入居型回復施設だ。支援にあたる職員やスタッフも薬物依存の経験がある。利用者は、食事作りを含めた共同生活を送りながら、復帰に向けたプログラムを受ける。代表の加藤武士さん(47)は「依存症は病気。糖尿病と同じような慢性疾患で治ることはなく、一生付き合っていかなければいけない」と説明する。

 8月から暮らし始めた男性(30)は、かつて大量の飲酒をしては記憶をなくし、仕事を無断欠勤した。親の勧めで精神科病院に入院したが、退院後も飲酒や脱法ドラッグを繰り返し、就いた仕事もすぐに辞めてしまった。「ここに来て、他の人も同じような悩みを持ってると気付けた。今は焦らずに、生き方の根っこを見つめ直したい」

 別の男性(50)は覚せい剤使用により、刑務所で2年10カ月服役。そこでダルクに通って回復を目指す人の話を聞き、「治療したい」との気持ちが芽生えた。「家族に頼ったり、お遍路をしたり、いろいろしたが治せなかった。治りたいという気持ちを支えてくれる仲間ができ、やっと自分の過去と向き合えた」という。今はスタッフという立場で運営に携わり、「立ち直ろうとする人を支える場所はもっと必要だと思う」と話す。

 施設を支援する地元の相楽保護司会の上村正吾会長は「薬物使用に対する世間の目は厳しく、すぐには受け入れが進まないのも理解できる」とする。それでも、「家族や地域から見放されることは再犯につながってしまう。地域で暮らしながら回復を目指す人を温かく受け入れられるよう、理解してほしい」と語る。

 互いを認め合い、生きる希望を取り戻そうとする人たちがいる。制度の導入を前に、地域での理解や支援を広げる取り組みが一層求められている。

[京都新聞 2013年10月16日掲載]

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