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石炭火力発電所計画 時代逆行、説明責任果たせ

滋賀本社 日比野敏陽
大型の石炭火力発電所2基が新たに計画されている神鋼神戸発電所。CO2排出増だけでなく大気汚染も懸念されている(神戸市灘区)
大型の石炭火力発電所2基が新たに計画されている神鋼神戸発電所。CO2排出増だけでなく大気汚染も懸念されている(神戸市灘区)

 地球温暖化対策を名目にした石炭火力発電所の設置計画が全国に48カ所あることを昨年11月18日付の記事で報じた。石炭は二酸化炭素(CO2)排出が他のエネルギー源に比べて多く、活用推進は明らかに時代に逆行している。関西電力管内では神戸市などで大規模な設置計画があり、滋賀や京都に暮らす私たちにとっても他人事ではない。

 「グローバルな気候変動対策の目標と矛盾するやり方でCO2排出の多い選択肢が優先されている」。昨年10月、環境やエネルギーに関する欧州の専門家でつくるNGOが各国の石炭政策について評価報告書を公表し、日本は最下位にランクされた。

 NGOは国内の計画だけでなく、日本が官民あげて途上国の石炭火力を支援していることも「G7で最悪」と厳しく批判した。実際、WWF(世界自然保護基金)の調査では、日本は2007年から14年までの8年間に国際金融機関などを通じて石炭火力支援に約2兆円を拠出している。これはもちろん世界一だ。

 国や火力発電施設を建設する事業者は取材に対し「最新技術でCO2排出は少ない」「最先端の石炭技術で途上国のCO2排出削減に貢献する」などと繰り返した。

 本当にそうだろうか。気候ネットワーク(京都市中京区)などが米国のNGOと行った調査では、日本が支援した石炭火力発電所で最新技術が使われているのは1割にも満たない。最先端の技術でも石炭のCO2排出は天然ガスを上回ることは、国の研究機関の調査でも明らかになっている。

 もう一つ指摘しなければならないのは、石炭火力が新たな大気汚染をもたらす可能性だ。

 「このあたりは(微少粒子物質などで)国の環境基準を一度もクリアしたことがないのに」。神戸市灘区の神戸港近くで河野達雄さん(65)は表情を曇らせる。近くの神鋼神戸発電所では大型の石炭火力がすでに稼働しているが、同社はさらに2基を増設する計画だ。

 河野さんは西淀川公害訴訟の原告。26歳から重いぜんそくを患う。神鋼などが責任を認めた大気汚染公害は「青春を奪い人生を狂わせた」。責任企業による発電所新設で環境がさらに悪化しないか、心配でならないという。

 「石炭回帰」を取材すると、政府と産業界に「日本の石炭技術は最先端」として説明責任を果たす気がないことと、公害の歴史と責任を忘れているのではないかという疑問に行き当たる。

 昨年末にパリで開かれた気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)は「パリ合意」で気温上昇を1・5度以内に抑えるためにCO2排出を「実質ゼロ」にする中期目標を設定した。果たして日本はパリ合意と石炭回帰をどう両立させるのだろうか。

[京都新聞 2016年1月13日掲載]

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