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二条城の駐車場新設 景観破壊する理念とは

報道部 竹下大輔
二条城敷地内の大型観光バス駐車場の予定地。樹木は伐採もしくは移植される(京都市中京区)
二条城敷地内の大型観光バス駐車場の予定地。樹木は伐採もしくは移植される(京都市中京区)

 公共交通優先の「歩くまち京都」、世界遺産を中心とした「京都らしい景観の創出」。二つの重点政策で掲げる崇高な理念を、京都市が忘れてしまったように思えてならない。

 市は世界遺産・二条城(中京区)敷地内で、大型観光バス駐車場を建設しようとしている。樹木90本を伐採、移植し、美しい緑地はアスファルトに覆われてしまう。

 世界遺産指定区域内の樹木を除去してまで、駐車場を整備する必要があるのか。疑問は、この一点に尽きる。

 計画では、東大手門の景観保全と歩行者保護を目的に、門前の駐車場(現行乗用車216台、バス30台)を乗用車120台、バス11台に縮小する。観光期には乗用車を34台まで減らし、バスは20台に増やす。増加するバス観光に対応するために、城北西部にバス10台分の新たな駐車場が必要になった、という。

 市はこう説明する。バス駐車場を確保しないと、周囲で違法駐車が増える。乗用車分をさらに減らすと、高齢者や修学旅行生の乗るタクシーが止まれない。住民生活と観光客の利便性を両立させた現実的な案だ、と。

 本当にそうなのか。市の2012年度調査では、駐車場が満車になったのはバスは1年のうち6日間、乗用車は21日間にとどまる。入城者が増えているとはいえ、慢性的な不足とは言い難い。しかも市は観光客に、周辺部の駐車場に車を置き、地下鉄などで中心部へ向かう「パークアンドライド」を推奨している。二条城入口まで徒歩15分程度の民間駐車場3カ所(計246台分)をホームページで紹介もしている。近隣の駐車場利用を促し、二条城の乗用車駐車場を高齢者や身障者用の最小限に絞って、バス用を多く確保することも可能なはずだ。

 外国人観光客の増加で、市内の他のエリアでは、一部の観光バスが違法駐車し、渋滞を引き起こしている。だが、市は二条城周辺で民間駐車場を借り上げバス用に改修するといった樹木伐採を避ける本格的な検討をしたようには見えず、新設ありきと疑われても仕方がない。

 市は「歩くまち京都」の一環で四条通の車線を減らし、歩道を広げた。大渋滞を招いたが、歩行者優先を明確にした事業は全国的にも高い評価を受けている。違法駐車による渋滞を恐れ、市中心部の二条城に駐車場を新設するのは、四条通での事業と矛盾しないのだろうか。

 市は10月にも駐車場予定地で樹木の伐採を始める。門川大作市長は2月の市長選で、四条通の渋滞に対する市民の反発に「今後は、政策の素晴らしい理念をしっかり伝える」と訴え、政策の事前広報を徹底する意欲を示した。ならば、世界遺産の自然景観を破壊してまで駐車場を整備する事業の理念とは何か、丁寧に説明してほしい。

[京都新聞 2016年4月13日掲載]

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