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18歳選挙権 主権者意識、大人こそ必要

洛西総局 川越弘太郎
模擬投票を体験する生徒ら。選挙権年齢引き下げで問われているのは選挙や政治に対する大人の意識ではないか(長岡京市天神4丁目・長岡中)
模擬投票を体験する生徒ら。選挙権年齢引き下げで問われているのは選挙や政治に対する大人の意識ではないか(長岡京市天神4丁目・長岡中)

 6月から選挙権年齢が18歳以上に引き下げられるのに伴い、全国の中学校や高校で模擬投票などの主権者教育が行われている。私が取材した中学校でも、仮想の市長選を通じて生徒がまちの課題と向き合い、手探りながらも自らの考えをまとめ、模擬投票で一票を投じた。このように実際の選挙で争点になるとみられるテーマを取り上げる学校がある一方、政治的中立性の担保が難しいと及び腰の所もある。主権者教育を取り巻く現場の状況は、軸足の定まらない大人の政治意識そのものを映しだす。大人がいま一度、選挙や政治について考え直さねばならないのではないか。

 昨年11月、長岡京市で初めて長岡中の3年生が模擬投票に取り組んだ。仮想の市長選を設定し、3人の候補者がそれぞれ、現実に市政の課題となっている阪急長岡天神駅前の整備や少子高齢化対策などを公約に掲げた。生徒は2日間、自身が住むまちの課題の解決策について考え、投票に臨んだ。「3人の中で一番、駅前整備の政策を具体的に示した。だからこの人に投票した」。話を聞いた男子生徒の表情に迷いはなかった。

 選挙権年齢の引き下げは、低迷する投票率の向上を狙ったものだ。7月に予定される参院選から、18、19歳の未成年者約240万人が有権者に加わることになる。

 こうした動きを受け、全国の学校で主権者教育が進められており、その多くが模擬投票の形をとっている。長岡中のように現実の政治課題を題材に実施する学校が多く、大阪市では「大阪都構想」の是非について模擬投票を行った高校もある。一方で、山口県の高校では安保関連法案に関する模擬投票の際、参考資料が新聞2紙だけだった点を県議会が「政治的中立性を損なっている」と問題視し、教育長が謝罪する事態となった。

 昨年10月、文部科学省は通知を出し、教員に対しては個人的な主義主張を述べることを避け、公正中立な立場で生徒を指導するよう指示した。ただ、そのための具体策は示されておらす、教育現場が混乱する一因となっている。通知を参考に模擬投票を企画した長岡京市選挙管理委員会も「どうすれば中立を保てるのか悩ましかった」と明かす。

 元高校教諭で主権者教育の高校生向け副教材の作成に関わった明治大の藤井剛特任教授(教育学)は「中学生や高校生は大人が考える以上に政治的課題を多面的に考えるものだ」と話す。その上で「文科省の通知は『ここまでならやっていいですよ』という分かりやすいものにすべきだ。模擬投票も思い切った挑戦を公開し合い、新しい方法を増やしてほしい」と指摘する。

 18歳選挙権は目前に迫る。問われているのは、主権者教育に対して、いまだ明確な方向性を示せていない大人の姿勢ではないだろうか。

[京都新聞 2016年4月20日掲載]

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