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大凧落下事故 責任ある安全管理体制を

滋賀北部総局 芝田佳浩
事故調査検討委員会がまとめた報告書
事故調査検討委員会がまとめた報告書

 東近江市で昨年5月31日に開かれた「東近江大凧(おおだこ)まつり」で100畳敷大凧が落下し、観客7人が死傷した事故から間もなく1年になる。市が設置した事故調査検討委員会は3月、まつりの安全管理体制に不備があったとする報告書を提出。これを受け、小椋正清市長は先月、今年のまつりの中止を決めた。江戸時代から続く伝統の大凧揚げは岐路を迎えている。

 「今回の事故は非常に多くのミスが重なって生じた。長年続く伝統行事で前例が踏襲され、組織として事前に十分な検証や検討、改善がなされてこなかったことに大きな問題がある」

 3月30日、小椋市長に報告書を手渡した検討委の谷口浩志委員長(びわこ学院大短期大学部教授)は厳しい口調で批判した。

 事故では重さ約700キロの大凧が観客席に落下し、堺市の男性=当時(73)=が死亡、6人が負傷した。大凧が落下する危険性を予見できたにもかかわらず必要な安全対策を取らなかったとして、警備担当の市職員と「東近江大凧保存会」役員の計3人が業務上過失致死傷の疑いで3月17日に書類送検された。

 報告書を読むと、安全上重要な事項の多くが十分な確認を経ずに判断されており、同保存会の「経験と勘」に頼りすぎた運営体制であったとうかがえる。

 大凧が観客席に落下して死傷者を出した最大の要因として、大凧の綱の長さが警備計画の前提となる150メートルよりも約60メートル長かったことが挙げられた。経緯は不明だが、谷口委員長は「あくまで私見」と前置きした上で、「綱を長くすれば高く揚がるという判断が保存会にあったのでは」と推測した。また、綱をつなぎ留めるアンカー(重し)を、事前に決めていたトラックより軽い車両に変更したことなども事故要因になった可能性があるとする。

 組織面での不備も指摘された。まつりは市や保存会などでつくる実行委員会の主催だが、責任の所在があいまいで、実質的には大凧揚げのほぼ全ての判断を保存会に委ねていた。報告書では「行政側がより主体的かつ組織的に安全対策・危機管理に関わるよう抜本的に改める必要がある」とし、安全管理マニュアルの策定を提言している。

 検討委は、十分な安全管理体制が築けるまで、100畳敷大凧揚げの自粛を要請。谷口委員長は「伝統も常に変化していくべきで、改善は絶えず行われる必要がある」と述べた。

 安全性を高めながら、伝統を維持するためにはどうすればいいのか。まつりに関わる全員が責任を持って取り組んでいくことが必要ではないか。

[京都新聞 2016年5月11日掲載]

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