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電力小売り全面自由化 地域貢献、考えて選択を

報道部 三村智哉
湖南市が地域新電力会社の電源に見込む太陽光発電パネル。今後、自治体電力会社の拡大が見込まれている(湖南市西峰町)
湖南市が地域新電力会社の電源に見込む太陽光発電パネル。今後、自治体電力会社の拡大が見込まれている(湖南市西峰町)

 4月から電力小売りの全面自由化が始まった。ただ、消費者の関心は価格の安さに集まりがちだ。自由化により、消費者が電力を発電方法で選ぶようになったり、地方に電力会社が設立されたりして、疲弊する地方の活性化につながることを期待したい。

 4月の自由化直前に連載した「エネルギー新時代 京滋の電力自由化」で、料金競争に走る企業や、進まない電力小売業者による電源構成の公表、自治体による電力会社設立の動きなどを取り上げた。

 取材で感じたのは、消費者が電力を選ぶことの困難さだ。電力はスーパーのように商品を見て選べない。鮮度や質も変わらない。情報開示も十分でない中、料金や発電方法、企業体質などから選ぶしかない。

 料金が安い理由も、「人件費や経費を切り詰めている」「ガスや携帯電話とセットだから」「スーパーのポイントを付ける」「自前の発電施設がある」「電力卸売市場で電力を調達する」とさまざまだ。これらが自分たちの生活や社会にどう影響するか。よく見極めなければならない。

 例えば、新電力会社の多くは電力卸売市場で電力を調達している。現在、市場単価が原油安で大幅に低下しているためだ。ただ、市場には原発由来の余剰電力も流入する。原発以外の電力を使いたい消費者にとっては、難しい判断が迫られる。

 既存電力会社側も、すでに作った原発を動かせばコストは安いし、新電力にも対抗できるという論理が働く。原子力規制委員会が20日、運転開始から40年以上経過した老朽原発の関西電力高浜1、2号機(福井県)の運転延長を認めたことは象徴的だ。今後、卸売市場の単価を低くし、消費者に安い電力を供給するためにも、原発再稼働が必要との考えが強まる可能性もある。

 だが、世界の電力事情に精通する米ロッキーマウンテン研究所のエイモリー・B・ロビンス所長は先ごろ木津川市で講演し「欧米では電力の需要予測や蓄電システムの発達で、太陽光発電など自然エネルギーでも十分に原発並みの価格競争力を持っている」と指摘した。原発や火力発電などの大規模発電の時代は終わり「自立・分散型の発電」に世界は移りつつあるという。

 一足先に電力を全面自由化したドイツでは、地域ごとに電気やガスなどを運営する公営事業者が地元で太陽光発電設備などを積極的に整備し、雇用の創出にも一役買っている。日本でも5月末、湖南市で市が筆頭株主となる地域新電力会社「こなんウルトラパワー」が設立された。こうした自治体新電力を、地域社会が育む仕組みを作ることこそ真の「地方創生」ではないか。

 消費者の行動一つで社会は変わる。頑張る農家を応援するために特定の野菜を買うのと同じように、誰にも負担を掛けず、地域のために尽くす電力を買う−。そんな消費行動が、日本のエネルギー体系を変えていく日を望みたい。

[京都新聞 2016年6月22日掲載]

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