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私立大の定員超過抑制策 国の適切な予算措置必要

文化部 松尾浩道
国による大規模私立大の定員超過抑制策
国による大規模私立大の定員超過抑制策

 定員割れが多い地方の大学に学生を分散させようと2018年度以降、文部科学省が大規模私立大の定員超過抑制策を本格導入する。適正な学生数の管理は教育の質の確保の原点とも言えるが、国立と私立の財政基盤の差が大きい現状では、大規模私大が自助努力だけで理想的な教育環境を構築することは一筋縄ではいきそうにない。

 「ざっと4倍だろう」。国立大から京滋の大規模私大に移った理系学部の教員は、卒業論文や修士論文の作成を指導する学生・大学院生の人数について説明する。国立大時代は、年度にもよるが平均3、4人だったが、現在所属する私大では10人以上。「人数をかけた方がやりやすい研究もある」とは言うが、学生1人当たりの指導にかけられる時間の違いは歴然だ。文系学部では、担当する学生数はもっと多い。

 私大の教員は一般的に「一人親方」であることが多い。国立大では、一つの研究室に所属する教授、准教授らが学生の指導を分担して受け持つこともできるが、私大では、准教授でも独自に研究室を率いて、一人で所属する全学生の面倒を見る。研究意欲が旺盛な若手の准教授が、講義の担当や入試問題の作成も含めた日々の教育で疲弊してしまうこともあるだろう。

 文部科学省の資料などによると現在、私立大の学生1人当たりに支出される国費は約15万円で、国立大の学生の約180万円と比較すると10分の1以下だ。教員1人当たりの学生数が私立大では約20人で、国立大の約10人の2倍となるのも仕方ない。

 定員超過抑制策を受け、大規模私立大は今後、定員充足率が1・0倍になる管理を目指すことになる。京滋では龍谷大が、今春の入試から定員管理を「超厳格化」した。大学として各学部に対し、定員充足率が90%に満たない場合は必ず追加合格を出す▽95%を確保できた場合の追加合格の実施については判断を任せる−などの指針を出し、抑え目に合格者を出した。その結果、理工学部(93%)、社会学部(95%)、法学部(99%)の3学部で定員を割り込む結果となった。受験生の多い大規模私立大において、複数の学部で定員を割り込むことはかなりまれだ。「教育の質を高めたい」との目標を追求した結果だという。

 大学の執行部が「定員割れは何とか避けたい」と思うのは当然だ。風評はもとより、授業料の収入減が経営を直撃する。入学定員が2千人で従来は定員の110%の入学者があった大学が定員を割り込めば、学生1人当たりの年間授業料を100万円とするならば、単純に2億円以上の減収となる。大幅な収入減となれば、教員を増やして教育環境を改善することも難しくなる。国の適切な予算措置なくして、地方も含めた私立大の振興は望めない。

[京都新聞 2016年6月29日掲載]

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