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府北部の農家民泊 国内外観光客の受け皿に

北部総局 北川裕猛
豊かな自然を満喫し、「民泊」の舞台となる農家で机を囲んで談笑する宿泊客たち(綾部市上八田町)
豊かな自然を満喫し、「民泊」の舞台となる農家で机を囲んで談笑する宿泊客たち(綾部市上八田町)

 農村生活を体験できる「農家民泊」が府北部など農山村地域で広がっている。記者も体験し、いろり端を囲んで採れたての食材を使った料理を味わい、夜更けまで住民や体験者との会話で盛り上がり、自然との関わりが希薄な都市住民を引きつける魅力を発見した。近隣住民とのトラブルも聞かれる都市部の民泊とは違い、農家民泊は国内外の観光客に府北部に足を運んでもらう絶好の機会と感じた。

 農家を開放するスタイルが人気を集め、修学旅行生にも活用されている。各自治体は、旅館業法の許可を得た場合を「農家民宿」と呼び、府内では6月末時点で69軒(2009年度15軒)、滋賀は81軒(同10軒)と増えている。

 取材の中で、「京都ブランド」を生かそうと、福知山市に移住して開業を果たした人にも出会った。同市三和町の農家民泊「ふるま家」を営む沢田さやかさん(43)は7年前に横浜市から移住。宿泊客の約9割は外国人でインターネットでも魅力が広がり、「里山は世界に誇れる観光資源。受け入れ体制次第で外国人を集められる」と語る。

 国は昨年約2千万人だった訪日外国人旅行者を、20年に倍増を目指す。観光シーズンは京都市内の主要ホテルは満杯に近い。ならば、都市部や従来の有名観光地ばかりでなく、国内外の観光客に府北部の農家に泊まってもらってはどうか。記者と農家で過ごした韓国人旅行者が「思い描いていた本当の日本を感じる」と満足そうに語った表情を見て、その思いを強くした。

 行政も開業支援に動きだす。福知山などを管轄する府中丹広域振興局は、開業希望者向けの説明会を年1回開き、ブルーベリー収穫やホタル観賞といった魅力を紹介したガイド本を作った。ただ、開業者は2月以降増えず、まだPRが不十分なようだ。開業費用もネックで、綾部市の農家民泊経営者からは「電気配線や水まわりの工事に出費がかかり、金銭的な支援があれば」との願いも聞いた。

 農家で宿泊代を得て宿泊者に食事を提供する場合は、ホテルや旅館と同一とみなされ、旅館業法や食品衛生法の許可が必要だ。その中で、南丹市などを管轄する府南丹広域振興局は都市農村間交流を促進させようと、宿泊客を受け入れやすくするガイドラインを作った。農家に安全対策と衛生管理の研修受講を義務付け、修学旅行などの少人数の教育体験旅行の受け入れに限る内容だ。「京都丹波・食と森の交流協議会」(南丹市)は受け入れ農家探しや団体客の手配などをし、すでに150軒以上の農家が登録。昨年度は約560人が宿泊し、環境整備は実を結びつつある。

 農家民泊は自然豊かな地方に芽生えた観光振興の可能性を広げる。昨年、京都縦貫道が全線開通し、観光振興の追い風が吹く府北部。官民一体の開業支援や受け入れ体制の整備をさらに進めてほしい。

[京都新聞 2016年8月3日掲載]

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