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日本料理の外国料理人研修 柔軟で中長期的な支援を

文化部 芦田恭彦
懐石料理の八寸に見入るフランスから訪れた研修生の2人。調理法だけでなく料理の背景にある伝統文化への関心は高い(京都市東山区・菊乃井)
懐石料理の八寸に見入るフランスから訪れた研修生の2人。調理法だけでなく料理の背景にある伝統文化への関心は高い(京都市東山区・菊乃井)

 海外から訪れた20〜30代の若手料理人が、京都市の料亭で働きながら日本料理の知識や調理法の習得に努めている。菊乃井(東山区)ではフランスから来日した男女2人、木乃婦(下京区)ではデンマーク人の男性、瓢亭(左京区)では台湾出身の女性をそれぞれ取材した。

 フレンチの一流レストランや、すし職人、会社勤めを経て料理人に転身するなど経歴はさまざまあるが、「日本の料理や文化をもっと深く学びたい」という情熱は共通している。料理や味に関する言葉や魚の部位などを細かに書き込んだメモ帳や、来日して出合った料理を撮りためたスマートフォンが印象的だった。

 研修に協力したNPO法人日本料理アカデミー(事務局・中京区)の理事長で菊乃井主人の村田吉弘さん(64)は「日本人しか日本料理を作れないという発想はもう古い」と言い切る。日本料理の看板を掲げてアジア風の料理を出す店が欧米で増えているといい、「国籍を問わず、各国で正確な知識と技を持つ人材を育て、ネットワークをつくる段階にある」と海外の状況を捉えていた。

  料亭での研修は、2013年度に相次いで設立された同市の特定伝統料理海外普及事業と、農林水産省の日本料理海外普及人材育成事業に基づいている。

  事業が整備される以前は、同アカデミーによる海外の料理人の日本料理研修に関して、無報酬で数週間に限られていた。現行の制度で一定の収入確保と最長2年間という研修期間の延長が可能となり、一定の前進は見られたが、十分とは言えない。

  ある料亭で、夏の味覚ハモの骨切りについて「まず、魚をさばく経験を1年。その後、最低でも2シーズンはしないと身につかない」と聞いた。別の店の料理人は「一通りできるようになるには7、8年はかかる」と明かした。

  各料亭の方針や個人の資質などで差はあるが、両事業とも最長2年間という研修期間は、あまりに短い。農水省の育成事業について、担当部署は「他の省庁の研修事業と同様の条件にした」として、期間延長に消極的だ。

  限られた時間の中で、研修生たちは終了後を見据えた課題にも向き合っていた。「食材や器による四季の表現は、伝統的な『見立て』の思想に関わる。ただ『きれいな料理』と思われたくない」「ストレートな表現の西洋料理と比べ、控えめな味や盛りつけをどう理解してもらうか」

  木乃婦主人の高橋拓児さん(47)は「彼らのアフターフォローは欠かせない。何らかの手を打てないか」と話す。研修に打ち込む外国出身の料理人たちが将来、「ほんまもん」の日本料理を自国などで広められるよう、柔軟な研修制度の見直しや、中長期的な支援態勢づくりを期待したい。

[京都新聞 2016年8月10日掲載]

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