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高校野球連合チーム スポーツの原点を実感

運動部 井上広俊
合同で練習する石部高と信楽高の選手たち。滋賀大会では初戦で敗れたが、出場できる喜びをかみしめていた(6月25日、湖南市・石部高グラウンド)
合同で練習する石部高と信楽高の選手たち。滋賀大会では初戦で敗れたが、出場できる喜びをかみしめていた(6月25日、湖南市・石部高グラウンド)

 高校野球は昨夏の甲子園で第1回大会から100年の節目を迎えた。甲子園の華やかさの一方、地方大会では部員不足のため複数校で連合チームを組むケースが増えている。その選手たちはたとえ勝利は難しくても表情はひときわ輝いていた。「試合ができてうれしい」とスポーツの楽しさを純粋に感じているようだった。この夏、球児の取材を通してスポーツの本質を改めて考えさせられた。

 今夏の滋賀大会では、2014年から連合チームで出場してきた「石部・信楽」に加え、「能登川・長浜農」も連合を組んだ。連合チームの制度は当初は学校の統廃合に伴う措置だったが、12年に部員不足の学校にも適用するよう日本高野連は条件を緩和した。今夏の滋賀大会には、統廃合による連合の2チームを含む計四つの連合チームが出場した。

 部員不足による連合チームの場合、合同練習はほぼ週末に限られるという。さらに複数校の部員が集まっても人数は少なく、県内の公式戦で勝利したケースはまだない。

 「石部・信楽」は13年秋から連合チームを組んできた。今夏は石部5人、信楽7人。9年前に夏の滋賀大会で8強入りした石部も今や単独では出場できない。連合チームは7月の滋賀大会初戦で今春の選抜大会8強の滋賀学園に0−18で大敗した。だが、主将を務めた石部の小林遥哉選手(3年)は試合後、「大会に出られて、野球ができたことがうれしい」と満面の笑顔だった。相手の攻撃を唯一無得点に抑えた回にベンチで全員が喜びを爆発させていた光景は、とても印象深かった。

 全国の高校の硬式野球部員数は最近10年間で16万6千〜17万人と過去最高水準を維持し、野球人気の根強さを示している。しかし、地方大会の参加校数で見ると、14年前の4163校をピークに減り続け、今夏は3874校となった。強豪校に部員が集まり、小規模校や都市部以外の高校で減少傾向が強まっているとみられる。

 多くの球児が甲子園を目指す以上、強豪校に進むという選択はあって当然だ。その中で育まれた高い競技力が、日本を世界屈指の野球大国へ押し上げた。ただ、勝敗を重視するあまり、スポーツの楽しさや野球をできる喜びに気づきにくくなっている選手も多いとも思う。

 練習で培った力を試合で発揮できた時の達成感、仲間との一体感、全力を尽くした充実感−。スポーツは奥深い。選手も指導者も、そして観戦する人々も、スポーツの多彩な魅力に改めて目を向けるべきではないだろうか。

 2020年の東京五輪を控え、スポーツ界はますます熱くなっていく。だからこそ、目先の結果だけでなく、スポーツの本質的な価値を追求する姿勢を忘れてはいけない。

[京都新聞 2016年9月14日掲載]

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