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東福寺通天橋の撮影禁止 拝観マナーの改善必要

報道部 浅井佳穂
「撮影禁止」の看板が掲げられた東福寺の通天橋(11月28日、京都市東山区)
「撮影禁止」の看板が掲げられた東福寺の通天橋(11月28日、京都市東山区)

 京都市東山区の東福寺が今秋、紅葉の名所「通天橋」上での撮影禁止に踏み切った。スマートフォンやデジタルカメラが普及し、橋上から身を乗り出して写真を撮ろうとする人がいるなど危険な状態になったためだ。京都では、同様の措置を取る寺が増えており、「拝観者がマナー改善を図るほかない」と指摘する声が上がっている。

 「紅葉の期間、大きな事故やトラブルがなくほっとしました」。12月上旬、東福寺の永井秀嶺広報主事(36)は安堵(あんど)を口にした。

 紅葉が盛りを迎える11月12〜30日、通天橋とその下流に架かる臥雲(がうん)橋の上を撮影禁止にした。橋の下を流れる三ノ橋川の渓谷には、カエデ2千本があり、絶景として知られる。1997年、JR東海の「そうだ 京都、行こう。」キャンペーンのポスターに使用され、人気スポットとなった。

 寺によるとシーズン中は1日約3万5千人が訪れる。近年、写真を撮ろうとする人が立ち止まり、橋上はすし詰め状態だった。中には、橋の欄干に腰掛けて写そうとする人もいたという。二つの橋付近は「明石歩道橋事故」の現場と形状が似ており、事故が起きる前に、と思い切った措置を取ることにした。

 二つの橋の天井から、「撮影禁止」と書いたり、カメラのマークに「×」を付けたりした看板を下げたほか、警備員を現場付近に配置し、注意を促した。「なぜ撮ってはいけないのか」と寺側に抗議した拝観者が複数いたほか、警備員の制止に耳を貸さず、写していた人もいたという。

 撮影禁止は、京都の寺では珍しくない。「床もみじ」で知られる実相院(左京区)は、カメラを持った拝観者が、ほかの拝観者に暴言を吐くトラブルなどがあったため、10年以上前から禁止にしたという。世界遺産の醍醐寺(伏見区)の三宝院は「写真を撮ろうと多くの人が一つのところにとどまると、建物の傷みが激しくなる恐れがある」と、禁止の理由を説明する。

 撮影者が増えている背景には、デジタルカメラの普及やスマートフォンの画質向上のほか、「フェイスブック」や「インスタグラム」など会員制交流サイト(SNS)の利用者急増に要因があるようだ。佛教大の吉見憲二講師(情報社会学)は、「スマートフォンとSNSを使えば即座に写真を友人らと共有できる。見た人からの反応を数値化でき、撮影者の増加を生んでいる」と分析する。

 吉見講師は、似た例として北海道美瑛町の名所だった「哲学の木」を挙げる。木を撮影しようとする観光客が、周囲の畑を踏み荒らすなどしたため、所有者が撤去した。「京都の寺でも、拝観者がマナーを改めないと、撮影禁止や拝観制限の場所が増加する恐れがある」と懸念する。

[京都新聞 2016年12月14日掲載]

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