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パリ協定とトランプ政権 京都議定書の熱、今こそ

報道部 仲屋聡
環境ビジネスの展示で、ビルの電力を管理するシステムをPRする滋賀県の企業。トランプ政策が懸念材料ではあるが、環境関連企業にとってパリ協定は追い風となっている(長浜市・長浜バイオ大学ドーム)
環境ビジネスの展示で、ビルの電力を管理するシステムをPRする滋賀県の企業。トランプ政策が懸念材料ではあるが、環境関連企業にとってパリ協定は追い風となっている(長浜市・長浜バイオ大学ドーム)

 新年に入り、寒波で大雪に見舞われた。急速に進む気候変動問題に思いを巡らすと、白く包まれた京都の街を眺めて少し安心する。しかし、米国では地球温暖化に懐疑的なトランプ大統領が誕生し、地球温暖化対策の新枠組み「パリ協定」の先行きが懸念されている。

 パリ協定は先進国と発展途上国がともに参加し、産業革命前から気温上昇を2度未満に抑え、今世紀後半に温室効果ガスの排出実質ゼロを目指す。「地球温暖化問題はでっちあげ」と主張してきたトランプ大統領は就任早々、オバマ政権が環境破壊につながると却下した原油パイプラインの建設推進を認めた。トランプ政権が地球温暖化に関するデータ収集を見直す懸念も出ていて、地球温暖化対策の後退が現実味を帯びている。

 石炭業界のてこ入れも視野に入れるトランプ政権で環境負荷が高い政策が続けば、罰則がないパリ協定は事実上意味をなさなくなる。ただ、急速な気候変動に不安を抱え、反発する国民は少なくない。

 米国はパリ協定からは制度上4年間は脱退できない。国際社会の圧力もあり、WWFジャパンの山岸尚之さんは「このくらいで世界の温暖化対策は揺らがない」と見る。参加国はトランプ政権の環境政策を様子見している状況だ。

 ただ、気になるのは足元がふらついている日本政府の姿勢だ。京都議定書誕生の地にもかかわらず、第2約束期間に参加せず、パリ協定の発効にも批准が出遅れた。消極的な姿勢が目立つ日本は、世界で存在感をなくしている。

 アジアでは台湾が初めて脱原発を決断した。一方で原発事故を起こした日本は、石炭火力発電所の数を増やし、事故を教訓としないまま、原発に回帰しようとしている。世界的な潮流の再生可能エネルギーへシフトが遅れた状況に、NPO法人気候ネットワーク(京都市中京区)の浅岡美恵代表は「日本政府と国際社会の感覚にギャップがある。気候変動の枠組みの中で日本は世界から期待されない国になっている」と指摘する。

 内閣府が昨年発表した調査では、パリ協定を知っていた国民は約4割に過ぎない。国会論戦を見る限り、気候変動への危機感や京都議定書の頃の熱は感じられない。

 今年は地球温暖化防止京都会議(COP3)での京都議定書誕生から20年の節目を迎える。議定書は、各国が気候変動への危機感を共有し、利害対立を乗り越えて生み出された。自国の利益にとらわれずに地球の未来を見据えてきた輝かしい記憶を風化させてはならない。12月には京都市で「地球環境京都会議」が開かれる。パリへと紡がれた温暖化対策の歩みを見つめ直し、京都の地からグローバルな課題への国民の関心を取り戻す機会にしたい。

 

[京都新聞 2017年2月8日掲載]

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