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高浜原発抗告審で司法判断 再稼働、社会の懸念考慮を

滋賀本社 江夏順平
関西電力高浜3、4号機の再稼働差し止め決定を受け、垂れ幕を掲げる弁護士ら(2016年3月9日、大津市京町3丁目・大津地裁前)
関西電力高浜3、4号機の再稼働差し止め決定を受け、垂れ幕を掲げる弁護士ら(2016年3月9日、大津市京町3丁目・大津地裁前)

 大雪の中、動かない車の列。滋賀県北部が大雪に見舞われた1月下旬、高島市と大津市を結ぶ国道161号で多くの車が立ち往生した。高島市北部は若狭湾岸の原発の緊急防護措置区域(UPZ)に入り、161号は広域避難の経路に挙げられている。原子力災害と大雪が重なる可能性もあり得る。原発事故の際、滞りなく避難は行えるのだろうか。

 昨年4月の熊本地震では、余震を恐れる多くの被災者が自動車で寝泊まりした。滋賀県は、地震との複合災害に備えた屋内退避のあり方などを加え、原子力災害広域避難計画の修正に着手した。実効性のある避難計画の策定には不断の見直しが求められる。6年前の福島第1原発事故で避難を強いられた人々の不安は人ごとではない。

 福井県高浜町の関西電力高浜原発3、4号機をめぐり大津地裁が運転を差し止めた仮処分決定で、関西電力の抗告を審理した大阪高裁が再稼働の可否について近く決定を下す。

 滋賀県の住民が申し立てた高浜原発3、4号機の再稼働禁止を求める仮処分で、大津地裁(山本善彦裁判長)は昨年3月、2基の運転差し止めを命じ、関西電力の異議も退けた。

 同地裁は決定で、過酷事故対策や耐震性、避難計画などで関西電力の説明が尽くされていないとして差し止めの結論に至った。特に「避難計画をも視野に入れた幅広い規制基準が望まれる」として、福島の事故を経た今は、国にこのような基準を策定する義務があると踏み込んで言及した。原発はひとたび事故が起きれば他の災害と被害の次元が異なる。避難計画まで含めた安全性が厳しく問われるのは当然だ。

 抗告審は昨年10月に一度審尋が開かれ、12月末に審理を終えた。関電側は最新の知見による耐震設計など十分な安全対策を講じていると主張。原発は経済性や環境性に優れ、2基を運転できないことで1日3億円の損害が生じるとして再稼働の必要性を訴えた。住民側は、耐震設計の根拠となる地震の揺れの設定が過小で安全性を欠き、原発にはリスクに見合う公益性がないと主張する。

 最新の科学でも地震や津波の正確な予測が困難なように、どれだけ対策を施しても完全はあり得ない。一連の審理では、リスクはどの程度まで許容され、どれ程の安全性が担保されるべきかが問われてきた。福島の事故を目の当たりにした社会の懸念は大きく、この点で合意に達しているとは言い難い。

 住民側の井戸謙一弁護団長は審尋後「全国の原発差し止め訴訟で裁判所の判断がきっ抗しており、大阪高裁の決定が持つ意味は非常に重くなっている」と強調した。国が主導して再稼働を進める中、司法はどこまで社会の懸念に耳を傾けているのか、注視したい。

[京都新聞 2017年2月22日掲載]

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