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福知山への移住促進 若者に響く魅力発信を

北部総局 秋田久氏
福知山市への移住希望者を対象にした空き古民家の見学ツアーの様子(福知山市大江町北原)
福知山市への移住希望者を対象にした空き古民家の見学ツアーの様子(福知山市大江町北原)

 人口維持に向け、福知山市は、移住のためのワンストップ相談窓口を置き、U・Iターンの呼び込みに本腰を入れている。近隣市より遅い着手とも思えるが、首都圏への売り込みや移住支援制度をつくり、福知山の「移住元年」とも言える施策を打ち出す。新たな切り口で市の魅力を全国に伝え、自治体間の移住者獲得競争を勝ち抜いてほしい。

 「意外がいっぱい。福知山」。移住候補地として全国的な知名度が低い市は、こんなキャッチフレーズでPRする。米大手コーヒーチェーン「スターバックス」などが北近畿で初進出するなど、「都会と田舎」の両面性をアピールするが、他都市との違いを出す点では弱い。近年の水害のほか、多くの命が奪われたJR福知山線脱線事故の発生場所と間違われるなどのマイナスイメージの払拭(ふっしょく)も必要だ。

 市の人口は、2015年の国勢調査で10年比0・9%減。府北中部で下げ幅は最少だった。だが、06年に合併した大江と夜久野、三和の旧町域では、この5年で人口の1割の1400人余りが減り、高齢化率は4割を超える。

 昨春に設置した市の相談窓口では、移住希望者への空き家や補助制度の情報を一括して提供。大江町と三和町の公営住宅を短期間貸し出す「お試し住宅」や月3万円の家賃補助も始めた。既存の上限100万円の空き家改修費に加えて清掃費や不動産の仲介手数料にも支援を広げた。

 2月末までに28世帯58人が就職や就農のためにU・Iターンしたのは、こうした施策の一定の成果と思える。ただ、低知名度は依然としてネックだ。1月に東京であった移住相談フェア。全国の市町村や企業など400以上の団体が参加し、来場者は約8500人だったが、福知山市のブースへの来訪は10組のみで、険しい道のりを再認識させた。

 「情報発信が成功の鍵。福知山には若者に響くキーワードが必要だ」。農業をしながら好きな仕事をする「半農半X」を提唱する福知山公立大特任准教授の塩見直紀さん(51)=綾部市=はこう助言する。地方移住者の傾向を「会社など組織の歯車で生きるのではなく、地方だからこそできる丁寧な暮らしの中で創造性を発揮したい人や、伝統文化にリスペクトを持っている人が多い」とみる。

 この点では、福知山には漆や和紙、養蚕といった全国にも名が通る伝統産業が残り、農業でも、クリや黒豆、小豆など食材の宝庫として名高い「丹波」地域だ。和洋の菓子店が多い「スイーツのまち」でもある。新旧の「まちの売り」を情報発信の柱に据えてはどうか。近年移住し、これらを生活の一部にしている新市民たちが「モデルケース」として発信し、新たな移住につながるような取り組みを期待したい。行政と、受け入れた住民とが一緒に力を合わせ、知恵を出し合ってほしい。

[京都新聞 2017年3月29日掲載]

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