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全国学力テスト復活10年 継続の是非含め見直しを

報道部 藤松奈美
今年も小6と中3が受験した全国学力テスト。毎年、50〜60億円かけて実施されている(4月18日、京都市中京区・北野中)
今年も小6と中3が受験した全国学力テスト。毎年、50〜60億円かけて実施されている(4月18日、京都市中京区・北野中)

 全国学力テストが復活して10年が経過し、今年も小6と中3が18日、一斉に受験した。ここ数年は、市町村別や学校ごとの成績開示の有無といった「競争」や「序列化」に注目が集まり、指導の改善にどう生かすかといった本質的な議論から遠ざかっていた。学校現場に学力への意識が浸透した今、テスト継続の是非も含め、方向性を見直すべきではないか。

 当然だが、テストをしたからといって学力が上がるわけではない。点数ばかりに目が行きがちだが、結果を分析し成果を上げた例もある。

 京都市内のある小学校は、7年前には最下位に近かった順位を、わずか数年でトップ層に引き上げた。当時は白紙回答も多く、「『どうせできない』が児童の口癖だった」と校長は振り返る。

 児童一人一人のつまずくポイントを細かく把握し、「個人カルテ」を作成。加配の教員が苦手分野のプリントを個別に用意し、朝学習で活用した。同じテストを学習を挟んで2回実施し、点数を伸ばすことで「やればできる」を実感させた。同時に、教員の授業改善を図り、保護者に家庭学習での協力を求めた。「点数はあくまで結果。しかし、たかが点数、されど点数で、伸びると教員も児童もやる気が出る」と明かす。

 大阪府茨木市は、学テの結果から、学校ごとの格差が大きいことが判明。2008年から全市挙げて学力向上に取り組んだ。独自予算で、学習支援員や社会福祉士を配置するなど人的措置を厚くし、改善につなげた。

 一方で、学力テストの実施は小6と中3の1学年だけ。子どもの経年変化は把握できず、「学力の健康診断」を担っているとは言い難い。滋賀県内の自治体は「意味がない」と断言し、小3〜中3を対象に、独自テストを定期的に実施している京都市のある教諭も「学テより有用」と話す。全員参加の学テを全国で実施するための費用は毎年50億〜60億円かかる。

 くしくも学テは、貧困と学力の相関関係をくっきりと映し出した。

 貧困世帯の児童が多く通う府内の小学校校長は、「児童を登校させ、机に向かわせるだけで、手いっぱい。正直、学テの点数は話にならない」と打ち明ける。児童の大半が生活保護や学用品補助が必要な世帯。勉強以前に生活習慣すら定着していない子も多いが、貧困の連鎖を食い止めるに、学力が切り離せないことも、誰よりも痛感している。「学校に課せられた役割が、非常に重い。人の手当がいくらでもほしい」

 学力底上げへの意識付けという意味で、学テは一定の役割を果たした。当初は大きかった都道府県格差も縮まった。限られた教育予算の中、国が次に重点を置くべきは、本当に必要な子どもに学力を付けるための施策ではないか。

[京都新聞 2017年4月26日掲載]

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