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県外流出する若手人材 地元企業の魅力発信を

滋賀本社 西川邦臣
滋賀県立大が始めた「地域中小企業講座」で、講師を務めた県内企業の経営幹部と意見を交わす学生たち。学生に地元で働くイメージをつかんでもらうことを目指している(彦根市八坂町)
滋賀県立大が始めた「地域中小企業講座」で、講師を務めた県内企業の経営幹部と意見を交わす学生たち。学生に地元で働くイメージをつかんでもらうことを目指している(彦根市八坂町)

 景気の回復基調や少子化を背景に企業の人手不足感が広がる中、京滋の大半を占める中小企業が若手人材の獲得に苦戦している。滋賀では近年、大学新卒世代の県外流出が顕著になっており、その要因の一つに、採用枠を増やす都市部の大手企業への人材集中が指摘されている。人材の流出は地域社会の貴重な支え手がいなくなることにもつながりかねず、個別企業の問題を超え、社会全体で考えるべき課題となっている。

 学生向け就職情報サイトの運営会社が12日、2018年3月大学卒業予定者の就職内定率(全国)が34%を超えたとする調査結果を公表した。来春入社に向けて就職活動している大卒予定者のすでに3人に1人が内定を得ていることになる。滋賀では中小企業の会社説明会が夏から本格化するが、県内で従業員約120人の自動車部品製造会社を営む社長(65)は「大手企業に新卒者をほとんど持っていかれている。今年の採用は昨年以上に厳しくなる」と漏らす。

 滋賀への転入者数から転出者数を引いた人口移動状況を見ると、短大や大学卒業世代の20〜24歳人口は13年にマイナス1147人となり、転出超過が千人を超えた。就職を機に県外へ出ているのが要因とみられ、14年はマイナス1364人、15年はマイナス1578人と拡大している。

 滋賀には約5万2千社の企業があるが、上場企業は9社しかない。このため、若者の県外流出を「学生の選択の幅が広がる近年の『売り手市場』では、給与や知名度で勝る大手企業に流れるのは仕方がない」とする声もある。しかし、別の大手就職情報サイトが17年卒業生を対象に地元就職を希望しない理由を尋ねた調査では、滋賀出身の学生が「大手企業がないから」と答えたのは23・7%にとどまっている。

 大手企業や県外で働きたいという学生の思いは当然尊重されなければならなし、是非、県出身者として全国で活躍してほしいと思う。むしろ注目すべきは、同じ調査で最も多かった「志望する企業がないから」(60・5%)の回答だろう。県内には5万2千社もあるのに、学生の多くが地元に気に入った企業がないと思っていることに、人材定着のヒントはないだろうか。

 滋賀県立大など県内六つの大学は今、3割にとどまる大卒者の県内就職率を5年間で4割にまで高める目標を掲げて教育プログラムの改革を進めている。県立大の担当者は、多くの県内学生が地元を離れる最大の理由に「地元で暮らすことの魅力、地元企業の魅力が、ともに学生に伝わっていないこと」を挙げる。大学の授業に、商店街や町家の活性化など地域課題を地域の住民とともに解決する過程を採り入れたり、県内企業の社長ら経営幹部から直接、学生に向けて社風や経営方針を語ってもらう講座を始めたりしている。

 近年は企業を選ぶ学生の視点も、社内での意見の通りやすさや休日の取りやすさなど「働きやすさ」を重視する方向へシフトしている。全国の中小企業で働く人は、労働者全体の7割を占める。個々の企業が社業の魅力を高めることはもちろんだが、地域で働く良さや地域を支えているという自負を、社員一人一人が学生たちに伝えることも大切だろう。

[京都新聞 2017年5月17日掲載]

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