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高浜原発の避難計画 実効性向上へ改定急務

東京支社 笹井勇佑 
福井県から避難してきた車両を洗い流す自衛隊員(2016年8月27日、綾部市・あやべ球場)
福井県から避難してきた車両を洗い流す自衛隊員(2016年8月27日、綾部市・あやべ球場)

 関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)が6日までに再稼働し、大飯原発(同県おおい町)も再稼働に向けた手続きが進んでいる。京滋に近い原発をめぐる状況が動きだしたいま、あらためて命を守る避難計画について考えたい。昨夏の避難訓練では、悪天候時の移動方法など多くの課題が残った。国や各府県は避難計画の改善へ議論を進めているが、改定時期は見通せず、対応が急がれる。

 原発事故時には、国が施設の状況や原発からの距離に応じて避難や屋内退避を判断する。高浜原発では、国が2015年12月に避難者の移動手段や被ばく検査の箇所を定めた計画を策定。16年8月に京都府、滋賀県も参加し、実効性を点検する訓練を行った。

 参加機関は訓練で浮かび上がった課題を議論し、今年2月、報告書にまとめた。検証期間が長いようにも思うが、内閣府の担当者は「今後の対応に実効性を担保するため、各機関との調整に時間をかけざるを得なかった」とする。

 報告書には訓練内容ごとに「良好な事項」や「改善すべき事項」が列挙され、項目数だけを比較しても「改善」は84と「良好」の51を上回り、課題が多く残ったことがうかがえる。

 「改善」を見ると、孤立地域の移動手段に想定していたヘリや船が悪天候で利用できなかった▽一部住民が屋内退避のタイミングで避難した▽被ばく状況の検査場所で検査前後の住民が混在した−など深刻な問題も散見される。

 報告書には、今後の「処置・対策」も盛り込まれた。放射線防護施設を充実し、悪天候時は避難体制が整うまで屋内退避も想定するほか、検査場所ごとのマニュアルも整備するとした。

 一方、検証結果を計画に反映する改定時期は「行政内部の調整に時間がかかり、できるだけ早くとしか言えない」(内閣府)状況だ。ある県の防災担当者は「改善点が反映されていない現在の計画は、災害対策として具体的かつ合理的なものと言えない」と不安をもらす。

 計画改定では、震度7を2度記録した熊本地震を受け、屋内退避の考え方も盛り込まれる。自宅に倒壊の恐れがあれば避難所などへ退避し、地震や風水害が同時に起こった場合は避難を優先するといった内容となる見通しだ。

 ただ、地震などの際に避難を判断する自治体側には、被ばくへの不安から「国も一定の責任を持って関与してほしい」との思いがあり、内閣府は情報提供など国の役割を明記する方向で調整している。

 避難計画の改善はあくまで通過点で、訓練を重ねて住民の理解を深めていく必要がある。大飯原発3、4号機は、国の避難計画すら策定できていない。事故への備えが後手に回っている印象は拭えず、国や各府県にはスピード感を持った対応を求めたい。

[京都新聞 2017年6月7日掲載]

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