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宇治碾茶ブランド化へ 伝統栽培の価値発信を

南部支社 杉原慶子
宇治市産の碾茶を審査する品評会(15日、城陽市寺田)
宇治市産の碾茶を審査する品評会(15日、城陽市寺田)

 スイーツなど近年の抹茶ブームで、抹茶の原料となる碾茶(てんちゃ)の生産量が増える中、宇治市の茶生産農家たちが、地域で生産する高品質な碾茶のPRに向けて動きだした。生産農家たちは茶の単価の横ばいや「お茶摘みさん」不足など苦境に立たされながらも、生き残りをかけ、地域団体商標の登録を目指している。

 農林水産省の統計によると、荒茶生産量は、全国的に碾茶を含む「おおい茶」が増加している。背景には食品加工用碾茶の需要拡大があり、同省によると「特に碾茶が増えている」という。急須で茶を飲む習慣が減、全国一の茶どころ静岡県でも主力の煎茶の生産量は減少しているが、「ここ数年は特に碾茶が増え、県内にも碾茶工場が増えている」(県お茶振興課)という。

 府内でも碾茶以外の茶種の荒茶生産量が10年間、横ばいか減少しているのに比べ、碾茶は2007年の629トンから16年の1527トンと大幅に増えた

 宇治市の生産農家は、市場で多く出荷される加工用抹茶との違いをアピールしようと、伝統的な栽培方法を守る碾茶を「宇治碾茶」として地域団体商標の登録を目指して4月、NPO法人「宇治碾茶生産振興会」を立ち上げた。碾茶は茶問屋が抹茶に仕上げるため、碾茶の段階でブランド化する話が持ち上がった。栽培方法などに一定の基準を設ける計画だ。

 加工用として流通する碾茶の中には、茶木に直接、1〜2週間程度覆いをしたものなども含まれるという。宇治市をはじめ、伝統的に碾茶を生産している地域では、茶園の上に被覆棚を設置し、約1カ月間、覆いをする。茶葉に鮮やかな色や柔らかい手触りを生み出し、うまみ成分のテアニンが日光に当たって渋み成分のカテキンにつながるのを防ぐことで、高級抹茶に仕上がる。

 宇治碾茶のブランド化が必要なのは、伝統的な技法で栽培された碾茶は、他の生産地のように大量に生産できず、現在の市場では少数になっている現状があるからだ。市内の生産農家は「昔ながらの覆下(おおいした)茶園での栽培や手摘みを守る高級碾茶を生産すれば、農家1軒当たり1ヘクタールが限界」と話す。

 高齢化による茶の摘み手不足や手間がかかる割に単価が上がらないなど、碾茶の生産農家が抱える課題は多い。今後は生産者自らがブランドを守っていかなければならないとの思いが強い。宇治市茶生産組合長で同会理事長の辻四一郎さん(63)は「これまで受け継いできた碾茶作りを次世代に伝えるためにも、宇治市から伝統の碾茶栽培を発信していきたい」と語る。

 長い歴史を重ねて農家が守ってきた碾茶栽培は、伝統文化だ。宇治碾茶の付加価値が広く理解されるようになってほしい。

[京都新聞 2017年6月21日掲載]

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