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京の街の防災 「日常化」と「共有意識」重要

報道部 寺内繭
火災を想定した納涼床からの避難訓練。地元と消防、警察、行政による活動が活発に行われている(9月5日、京都市中京区)
火災を想定した納涼床からの避難訓練。地元と消防、警察、行政による活動が活発に行われている(9月5日、京都市中京区)

 京都市の五花街の一つ、中京区の先斗町で、昨年発生した火災を契機に、防災活動が活発化している。地元に消防、警察、行政が加わった組織をつくり、定期的な訓練や防火指導に力を入れる。取材を通して見えてきたのは「防災対策の日常化」と、みんなのまちという「共有意識」の重要さだ。これからのまちづくりに不可欠な要素を教えてくれている。

 火災は昨年7月5日夜の営業中に発生、軽症者1人で計5棟が焼けた。出火した店では当時、納涼床を渡って隣の店に避難した客もいた。先斗町通は道路幅が狭く、古い木造建物が密集しており、不特定多数が行き交う繁華街だ。延焼による被害拡大の恐れもあっただけに、地元は再発防止やまちづくりに生かそうと行動した。

 昨年10月に地元と消防、警察、市で「先斗町このまち守り隊」を発足。納涼床からの避難訓練や火災検証訓練を実施し、いまも定期的に各店に防火指導を続けている。

 特徴的な取り組みが、地元で中心的役割を担う「先斗町まちづくり協議会」が進める、各店の散水ホースや散水栓をつなげる共通部品の導入。普段は店前の散水に活用し、火災時にはホースを連結して消火につなげることができる。安価で使いやすく、消防車が入れない路地の地域では特に有効で、約350店のうち約100店が導入済みだ。

 同協議会のアドバイザーを務める立命館大歴史都市防災研究所の金度源(キムドウォン)准教授は「防災対策の日常生活化」の重要性を強調する。日ごろから使っていれば万が一の時も活用でき、メンテナンスにもなる。ほかにも夜間にごみを出さない、ダクトの掃除をする…。日々の細かな積み重ねが、防災文化の構築につながると実感した。

 もちろん課題も見えてきた。道に不慣れな観光客を安全な場所まで避難誘導するにはどうするか。アルバイトや従業員など多様な雇用形態で関係者の防災意識をどう醸成させるか。新たに設けた店内から店外への2方向避難経路をどう確保していくのか。活動を通して関係者一人一人が考える契機となっている。

 協議会の神戸啓(あきら)事務局長(40)から興味深い話を聞いた。古くから先斗町に関わる人の中には、「先斗町に住まわせてもらっている」「商売させてもらっている」という「借り物」意識の考えがあるという。例えば私道の路地でも、大勢の人が通る「みんなのもの」と受け止める。これはまちづくりにも当てはまる。

 今は「自」と「他」を分けがちだが、住民や行政など地域に関わる人の共有意識が、防災やまちづくりには欠かせない。古い木造建築を守ってきた地域は、災害を防ぐ努力をしてきたと言える。先斗町の取り組みは他地域でも参考になりうる。先進事例の一つとして生かしてほしい。

[京都新聞 2017年10月11日掲載]

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