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帰宅困難者対策 柔軟運用で情報提供を

報道部 竹下大輔
JR京都駅中央改札近くにある鉄道案内所に詰めかける外国人観光客。新幹線が再開したことを知らない人もいた(18日午後3時ごろ、京都市下京区)
JR京都駅中央改札近くにある鉄道案内所に詰めかける外国人観光客。新幹線が再開したことを知らない人もいた(18日午後3時ごろ、京都市下京区)

 京都市が4月13日に発表した帰宅困難者ガイドマップ作成の広報文には次の記述があった。「全国に先駆けて、観光客に重点を置いた京都モデルの帰宅困難者対策を推進しています」。その矢先である。今月18日の大阪府北部地震で、交通機関がまひしたJR京都駅(京都市下京区)は外国人観光客であふれ、長時間、通路に座り込む事態となった。

 ガイドマップは、東日本大震災の教訓を受けて策定した計画を、観光客らに広めるのが目的。改札に人が殺到する事態を防ぐため、列車運行状況を多言語で伝える情報提供スペースや休憩・宿泊所を駅周辺に設ける内容だ。

 しかし、この計画は「二次災害の危険がある場合」の想定だったため、今回は実行されなかった。結果、改札口のJR案内所に観光客が殺到、駅員のアナウンスが日本語中心だったこともあり、新幹線や関西空港へのバスが運行再開した後も外国人観光客の混乱は続いた。

 計画では、情報提供スペースや休憩所は、市の要請に基づき、鉄道事業者や駅周辺施設が開設、運営に協力する。災害時は市が救援活動を優先し、支援に当たる余裕がないためだ。ここが計画の「核」だった。

 市は午後5時になって、JR西日本に情報提供スペース設置を打診したが、「対応可能」という返答があったのは、混乱が一定緩和された午後8時ごろだった、という。JR職員が運行再開への作業に忙殺されていたことを考慮すれば、致し方ないだろう。

 市内の被害は甚大ではなく、市役所機能にも支障はなかったが、夕方になるまで、市が主体的に動いた形跡はほとんどみられない。市は常設の「帰宅支援サイト」で日、英、中、韓の4カ国語で運行状況を発信したというが、外国人が多くアクセスする無料公衆無線LANサービス「KYOTO Wi−Fi」に接続すると自動的にサイトが立ち上がる災害時の仕組みを活用しなかった。

 二次災害の危険がなくとも、市独自で駅に情報提供スペースを設けるなど、計画を柔軟に運用することはできなかったのか。

 休憩所の設置でも問題が露呈した。対策に当たった市都市計画局は在来線の再開が想定より遅れたため、午後5時から6カ所の施設に打診した。ホテルなどは準備を始めたが、駅前のキャンパスプラザ京都(下京区)を所有する市総合企画局は「職員が少なく夜間は難しい」と断り、京都アバンティ(南区)を管理する市の第三セクターは夜になるまで打診のメールに気が付かなかった。京都駅で夜を明かす利用客はおらず、設置は見送られたが、両施設は帰宅困難者の受け入れ協定を結んでいる。対応の不手際を指摘されても仕方がないだろう。

 結局、全国のモデルとなるはずの対策が機能したとはいえなかった。市が掲げる「世界があこがれる観光都市」への道のりはまだ遠い。

 

[京都新聞 2018年6月27日掲載]

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