The Kyoto Shimbun

(1)春のぬくもりとさわやかさ


せせらぎを連想させる淡い色合いの粉白彩器に、旬の食材を使って彩りよく盛られたホタルイカの春サラダ

 器や食は、日常を健康に、元気にしてくれます。特別な食材でなくても、色合い、配置、器とバランスなど自分なりの工夫で、相手を楽しませることができます。私が心を込めて造った器に、茶道・華道をたしなむ妻の手料理と花を添え、紹介していきます。

 私はいま、山科駅の近くに工房を構えています。陶芸の世界に入ったきっかけを、少しご紹介します。高校卒業時、手に職を付けたいと父に相談したところ、知人の陶芸家を紹介され、工房を訪ねて興味がわきました。1969年、京都市工業試験場に入って初めて土を触り、土の冷たさ、柔らかさを知りました。

 成形方法、釉薬(ゆうやく)、焼成…と覚えることは山ほど。ただ、土の表情が刻々と変わり、窯で焼くことで土から陶へと生まれ変わるプロセスが不思議で、何と言っても窯出しの時は胸が踊ります。うまく焼けないこともよくありますが、想像以上に良く焼き上がった時は「これ見て、見て」と声も弾みます。その繰り返しが好きになり、毎日楽しく過ごせ、あっという間の1年を皆勤賞で修了しました。とはいえ、一人前とはいかず、卒業後に本格的な弟子入り修業に入ったのです。

 テーブルについて、大鉢・大皿に山盛りで華やかに出てくると、今日は「食べるぞ」という気になりますね。一人分を小鉢に懐石風に出されると、少し物足りなく、もうひと口、ほしいなぁ…。私の場合、お酒があればなお良く、会話も弾みます。

 今回の器は、土をたたいて板状に延ばし、石こう型に伏せ手でならし皿状に成形、素焼き後、呉須(コバルト)で下絵を描き、チタン釉をかけ、その上に辰砂(しんしゃ)(銅赤)で加飾し、炭を用いた焼成方法で焼き上げました。淡い白色の地に呉須(ごす)絵のブルーに赤い彩文の絵付けが、うららかな春のせせらぎを連想させる「粉白彩器」の盛器です。妻はどんな料理を合わせてくれるのでしょう。(雅美)

 この企画を頂き、初回のお料理を何にしようかと考えている時、富山でホタルイカ漁が始まったというニュースを聞きました。新鮮なホタルイカを刺し身で、あるいは湯がきたての熱々をホクホクと一口で食べるのがおいしそうで、主人も私も食べたくなりました。

 その日、お買い物に出かけると店頭に並んでいるのを見つけ、そのホタルイカを生かせるお料理にしようと決めました。主人の白い盛器の作品に、春野菜の緑とホタルイカのほの赤い色合いが美しいと思い、緑が色鮮やかで、みずみずしくシャキシャキの食感を味わえる春野菜に、かわいい甘みのあるホタルイカをあわせ、春のサラダにしてみました。  味付けは、白みそにからしとお酢を効かせ、すっきりとした少し辛味のあるドレッシングで。春に向かって体の調子を整えてくれそうで「粉白彩器」に盛り付けると互いに良く映り、春のぬくもりとさわやかさが演出できたと思います。

 ホタルイカで思い出すのは数年前、富山の友人から、ビニール袋に海水とともに5、6匹が入って送られて来たことです。地元の業者による、生きたまま地方発送する試みでした。デリケートなイカなので、生きてはいるのですが、暗くしても刺激を与えても、特有の青緑色の発光は見られませんでした。それでも、動いているのが珍しく、うれしがって指でつついたりしていました。

 そんな思い出のある、私も主人も大好きなホタルイカを使った「春のさわやかサラダ」、とてもおいしいですよ。(泰子)


ホタルイカの春サラダ

【材料】
ホタルイカ(ゆでたもの)、スナップえんどう10〜15本、新物のジャガイモ中1個、キュウリ1/2本、セロリ10センチ、サラダ大根1/2個、プチトマト5個、サラダ菜
【ドレッシング】
白みそ大さじ2、米酢大さじ4、砂糖大さじ1と小さじ1、和風ねりがらし小さじ2、だし汁大さじ1

【作り方】
(1)ジャガイモを皮付きのままゆで、熱いうちに皮をむき、プチトマトより少し大きいくらいに切る。
(2)スナップえんどうのさやの筋を取り、熱湯で1〜2分ゆで(緑色が鮮やかになる)、すぐ冷水に取る。食感が残るよう、ゆですぎないこと。
(3)キュウリを縦半分に切り、セロリは筋を取り、いずれも斜めの千切りにする。サラダ大根は、皮をむき、薄くスライスして千切りにする。プチトマトは半分に切る。
(4)白みそ、和風からしをだし汁でとき、砂糖と酢を入れまぜ合わせ、ドレッシングを作る。
(5)キュウリ、セロリ、大根を半分ぐらいのドレッシングでまぜ合わせておく(サラダ大根の赤色が、酢とからまってやさしいピンクになります)。
(6)器にサラダ菜をしき、その上にまぜ合わせておいたキュウリなどを盛り付け、スナップえんどう、ホタルイカ、ジャガイモ、トマトを色取り良く盛り付け、最後に残りのドレッシングをかけていただきます。

[京都新聞 2007年3月26日掲載]

毎月第4週に掲載します。

片山雅美(かたやま・まさみ)
1950年京都市生まれ。京都市工業試験場修了後、陶芸家西川實氏に師事。日展会友、京都工芸美術作家協会理事、日本新工芸家連盟評議員。
片山泰子(かたやま・ひろこ)
1954年、京都市生まれ。

陶芸家片山雅美さん(手前)と妻の泰子さん(京都市山科区の工房)

想い出の作品


1969年に京都市工業試験場に入り、初めて作った作品です。手順もわからず、先生のご指導と、同期生が作るのを見つつ、四苦八苦しながら作ったものです。ひも状の土を角に積み上げて四角い器にし、側面に土を張り付けたデザインにし、白い釉薬で焼き上げました。今も、工房の棚の中ですましています。忘れることの出来ない大切な処女作です。(雅美)


旬花


雅美さんの作品に、泰子さんがユキヤナギ、エビデンドラム、アジサイの新芽をいけた。早春の雰囲気が漂う。

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