The Kyoto Shimbun

(2)風味と色目で楽しむ一品


鮮やかな赤織部に、春の香りいっぱいのかき揚げをのせて、華やかにアレンジ(写真・吉田清貴)

 前回の春サラダ、いかがでしたか。解禁日のホタルイカ漁は、例年にない不漁で、数匹しか捕れなかったそうです。暖冬など自然のメッセージなのでしょうか。北陸を襲った大地震、心よりお見舞い申し上げます。

 さて、4月2日は57歳の誕生日なのですが、奇(く)しくも1970年4月2日は陶芸の弟子入り初日でした。工業試験場の紹介で東山区・馬町のある陶芸作家のお宅に出向きました。

 玄関先に先生がおられ「片山です。よろしくお願い致します」とご挨拶(あいさつ)。工房には、磁土をロクロでひいてレリーフ状に模様付けされた白磁花瓶が数点並んでいました。きっちりと整頓され緊張感漂う静けさ。窯場や原料置き場などを案内していただき、ロクロが据え付けられた奥の作業室を与えてもらいました。

 部屋の棚には、今まで見たこともない形や美しい釉薬(ゆうやく)の作品が並んでおり、こんな作品が焼けるのかと期待が膨らみます。まずは、掃除に道具作り。そのとき作った道具は、今でも大切に使っています。

 先生は、その年の8月21日に亡くなられました。2階のベッドから釉掛け・窯詰めのことを、いろいろ指示してくださった。この4カ月間の事は今でも鮮明に覚えています。

 4月の料理に、筍(タケノコ)を使うことにしていたので竹のことを。竹は、古来より衣・食・住に使われ、陶芸でもいろいろな場面で登場します。制作時の線刻、模様付け、土を削ったり、指の代わりもする竹べら。同じ大きさの器を数作る時、径と内高を測る十文字形のトンボと言う道具…。亀甲竹を器の型として制作したこともあります。乾燥用の干し棚にも竹を使います。

 竹は水にも強く、滑りが良い。特に白磁など白く美しいやきものには、鉄粉を排除せねばならないので重宝されます。京扇子やうちわなどの竹の削りくずを灰にして、釉薬の原料として焼かれていたと聞いたことがあります。(雅美)

 土に埋もれている筍を目で探し当てて、細長いくわで根元を切り、一撃で掘り起こすのは熟練の技ですね。地上に現れた筍は、透き通るように水みずしく色白で生き生きしていて、生でも食べられそうです。このような筍はなかなか口にする事はできません。

 主人は、厚くスライスされた、根元のかたやわらかい感触が好きで、私はどちらかと言うと先の柔らかいのが好きです。筍の風味が生かされた若竹煮・木の芽あえは定番でよく食します。

 赤織部の皿を使うと言うことで、色目良く盛り付けた料理のバランスを考えました。木の芽の緑がアクセントにした、一味違ったわが家の一品「木の芽でいただくかき揚げ」を、赤いお皿に盛り付けてみました。(泰子)

■赤織部の半月皿

 半月の板状に土を延ばし、型と手びねりで土が乾かないうちに側面を竹べらを押し当て竹節の表情に仕上げ、乾燥させ800度で素焼きする。その後、灰釉(わら灰、土灰)に銅を加えた釉薬を流し掛ける。側面には釉を掛けない。本焼きは1200度で。木炭を使って炭化焼成することで、銅が赤く発色し焼き締められた側面は、光輝く火色が付きマットな赤と土の表情があたたかい赤織部半月皿に焼き上げました。半月皿を2客使って円皿に、数客を連山にと食卓をコーディネートして楽しめます。赤織部については今後も詳しく書かせていただきます。

 片山雅美陶展 5月8−20日(月休)、ギャルリー石塀小路和田(京都市東山区)。赤織部の作品展。


木の芽でいただく 筍のかき揚げ3種

【材料】
タケノコ200グラム(中ほどから根元を使う)、ちりめんじゃこ20グラム(乾燥した中くらいのもの)、エビ大1尾、ロースハム1枚、木の芽適量、小麦粉大さじ3.5、水80cc、溶き卵小さじ2

【作り方】
(1)タケノコの下ゆでは、たっぷりの水にぬか、赤唐辛子を入れ、根元に竹ぐしがすっと通るようになったら火を止めそのまま冷ましておく。
(2)タケノコをペーパーでふき、長さ5センチ、幅7〜8ミリの短冊切りにする。
(3)切ったものを、再度軽くペーパーで水分をふき取り、お皿に広げておく。
(4)エビは皮と背わたを取り、ペーパーで水分をふき取り、1センチに切る。
(5)ハムは半分に切り、タケノコと同じくらいの幅に切る。
(6)ボールに小麦粉、水、溶き卵を入れ、衣をつくる。
(7)ボールを3個用意し、作った衣を3つに分ける。
(8)皿に広げておいたタケノコに、大さじ1.5の小麦粉をまぶし、3個のボールに分ける。
(9)ちりめんじゃこ・えび・ハムも、各ボールに入れ、最後に木の芽の葉を少々入れ、軽くまぜ合わせる。
(10)熱した油に衣を落とし、浮き上がれば、スプーンに(9)を少しすくって油の中に入れ、もう一度すくって最初の具の上に交差するように置いて揚げる。
 ちりめんじゃこはカリカリとした食感と塩味、エビはぷりぷりの甘味、ハムの味と色合いがおいしい。木の芽を添えて、春の香りを召し上がれ。

[京都新聞 2007年4月23日掲載]

毎月第4週に掲載します。

片山雅美(かたやま・まさみ)
1950年京都市生まれ。京都市工業試験場修了後、陶芸家西川實氏に師事。日展会友、京都工芸美術作家協会理事、日本新工芸家連盟評議員。
片山泰子(かたやま・ひろこ)
1954年、京都市生まれ。

竹を使った作陶の道具の数々。線刻や模様付けには欠かせない(京都市山科区の工房)

想い出の作品


1975年の日本現代工芸展で工芸賞を受けた「迷夢」。西川實先生に内弟子修業中、先生の黒い釉薬で黒陶に焼き上げ、竹べらで線刻して白いカシュー(人工漆)を塗り埋めし、人影を浮かび上がらせました。題を思い悩んでいて、夢を見たことをきっかけに決めました。審査発表の日、先生の奥さまが「片山君おめでとう。受賞したよ」と作業場に来られたのを覚えています。作家活動のきっかけとなった一作です。1976年の京都工芸美術展で佳作となった「游」も連作で、水面に遊ぶ水鳥を黒陶と白い線で表現し、京都府に買い上げていただきました。(雅美)


旬花


赤織部の花器に、ルッコラ(ロケット)とフリージアを。ルッコラはハーブなので、食べられます。(泰子)

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