The Kyoto Shimbun

(7)祝いの気持ちを波打つ皿に


波打つような動きのある器に鯛のあら煮を。卓上で存在感を示しそう=撮影 吉田清貴

 陶芸作家・西川實先生は、個展に向かって作品制作に入られた。ロクロにて、大きな壷(つぼ)に香炉などを。先輩は注文の酒器徳利、私に盃の仕事を与えて下さった。中の空気を抜くために菊もみをした土をロクロにすえ、あぐらをかいて、見本を前に身を引き締めスイッチON。先生や先輩の視線も気になり、うまく引き上げなければと、緊張する。一時間座るも桟板(さんいた)には数個しか並んでいない。足も痛くなってくるが、作り続けた。

 昼食の準備になると、足の痛みから解放された。食事をしながら、口の厚みや角度のことを指導され「ハイわかりました」と返事。食事後、再びロクロに向かうが、思うようにはこなせない。数日かけ、やっと高台を削って仕上げに入るも、寸法、重さがふぞろいでセットにならず、また作り続けた。

 毎食時、いろいろなことを話して下さった。技法、土、釉薬に作品に向かう心入れ。常に自然界、生活の中にあることを忘れるな、と。ものの表面だけを見るのではなく、あらゆる角度から観察し、五感を働かせることが大事。たとえばリンゴなら、まずは微妙な色の変化や形を見る。1個1個に個性があり、みずみずしく、やわらかなゆがみがあり美しい。さらに縦割りにするか横切りにするか、四等分、六等分それぞれ断面が違い、それを味わってどう感じ表現するかは個性。また、常の小品作りの繰り返しと制作への意欲が出品作につながるのだと。こうしたヒントや教えを、惜しげなく与えて下さった。

 毎週土曜、仕事と掃除のあと帰宅。今週はこんなことがあった、今はロクロ成形をしている、と父母に仕事内容を話すと「がんばりや」と励ましてくれた。日曜日の午前中は自宅のロクロに向かい、作りたいと思い描いていたものや、先生の手による壷や香炉を模作練習。午後は美術館やギャラリーへ出向き、作品鑑賞、京都市工業試験場の同期と話し込む。一日が早い。月曜日の朝工房へ戻った。

 現在も、案内状が届くと時間の許す限り、妻と2人でギャラリーへ出かける。ギャラリーや作家の方と交わす一言二言が勉強にもなり、人との出会いが気分転換にもなる。一人の時は「今日は奥さんは?」と聞かれ、ひやかされます。(雅美)

 私は、結婚するまで美術館やギャラリーへ出かけることが少なかったのですが、結婚後は主人と2人で出かける機会が増えました。時々外食をして帰ります。何年も前の話になりますが、主人も私も和食が好き、特に魚が大好きなので、鯛(たい)のあら煮を注文。とてもおいしかったので、主人はネコの様に骨までしゃぶって食べ終えた時、カウンターの向こうから「こんなにきれいに食べてくれはったん初めてやわ」とひと言、主人も「おいしかった。魚好きなんです」と返しました。

 そんなことを思い出し、また富山の友人から季節のお魚を送っていただくので、そのご主人に、魚のさばき方や調理の仕方などを教えていただき、私なりに、さばく事を覚えました。その友人の娘さんが、このたびご婚約され、お祝いの気持ちも込めて鯛を使ったお料理にしました。頭や中骨を、季節の山いも、しめじ、ごぼうと合わせ、野菜に鯛の味がしみ込み、おいしいあら煮に。新鮮な身は鯛の甘みを生かして頂く昆布〆に致しました。(泰子)

 料理を盛る器は、土を薄く延ばし、少しずらして二つ折りにし、指で波打たせ少し動きを与えた細長い皿。素焼き後、呉須(コバルト)で下絵を付しチタン釉を施し、所々に赤織部釉を配して炭化焼成した粉白彩器です。(雅美)


鯛のあら煮

【材料】
鯛のあら250〜300グラム、ごぼう50グラム、山いも250グラム、本しめじ1/2袋、土しょうが1かけ、煮汁(水1カップ、酒1/2カップ、砂糖大さじ2、みりん60cc、濃口しょうゆ60cc)木の芽
【下準備】
(1)鯛は洗ってうろこを取る。(うろこは大根や人参の切れ端で、頭の部分は細かいので器具を使うときれいに取れ、台所の汚れも少なく)
(2)エラや内臓を取り出し、血合いなどもきれいに洗い流す。
(3)頭と身を切り分ける。身は3枚に下ろして腹骨の部分を切り落とし、中骨を半分に切り、あら煮用にする。頭も2つに割っておく。
(4)ごぼうは土を洗い流して、2〜4等分し6センチの長さに切る。
(5)(4)を水に取り、サッとゆでる。
(6)山いもは皮をむき、2センチの輪切りにして串がすっと通るくらいまで火を通しておく。
(7)しめじは小房に分ける。
(8)土しょうがは3〜4枚皮付のままで薄切りに。針しょうがも用意しておく。
(9)鍋に煮付けの調味料を合わせる。
【作り方】
(1)熱湯と氷水を用意し、ザルに鯛の頭や骨を並べ熱湯を注ぎかけすぐに氷水に入れ、血合いなどの汚れを取りザルに上げて水を切っておく。
(2)鍋を火にかけごぼうを入れる。
(3)鍋の回りが少しふいてきたら、鯛としょうがの薄切を入れる。
(4)煮立ってきたらアクを取り、落し蓋をして中火で5〜6分煮る。
(5)山いも、しめじを入れて、煮汁をかけながら2分ほど煮て火を止め味をなじませる。
(6)器に盛り付け、針しょうが・木の芽を添える。

鯛の昆布〆

【作り方】
(1)鯛の身に軽く塩をして30分ほどおく。
(2)昆布は適当な大きさ2枚を用意し水で湿らす。
(3)身をそぎ切りにして、昆布にはさみ約1時間おく。
(4)すだちをひとしぼりしていただくと鯛の甘みが口の中でひろがります。

[京都新聞 2007年10月1日掲載]

毎月第4週に掲載します。

片山雅美(かたやま・まさみ)
1950年京都市生まれ。京都市工業試験場修了後、陶芸家西川實氏に師事。日展会友、京都工芸美術作家協会理事、日本新工芸家連盟評議員。
片山泰子(かたやま・ひろこ)
1954年、京都市生まれ。

3枚におろした鯛の身はそぎ切りして、昆布〆に

想い出の作品


タイトルは「彩層」。掻き落しは、成形した素地に白化粧土を施し、線刻で模様を付ける伝統技法です。この技法をアレンジし、成形した素地に青・緑・黄・白土を筆で何度も何度も塗り重ねして素焼き。その後、黒釉を全面に施し、小刀にて一線一線を引っ掻(か)いて線刻し、下地の色模様を浮かび上がらせ本焼きした加飾の作品。1984年、連作の「彩器」で京都工芸美術展の新人賞を受け、賞金でイタリア・フランスへ1カ月間研修旅行し、体感リポートを提出。1989年、日本新工芸展での受賞作「彩装」は平安神宮に奉納させていただくなど、一連の作品をいろいろ焼き上げることができました。(雅美)


旬花


秋の山をイメージした扇面の花器に、まゆみと紅葉した夏はぜに、秋明菊を生けこみました。(泰子)

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