The Kyoto Shimbun

(12)成長の息吹、制作の励みに


土を薄い板にスライスし折り紙のように曲げて作った粉引の角皿に、おひなさまをイメージした茶巾ずしを(撮影 吉田清貴)

 日差しが少し暖かくなってくると、待ち望んでいたように草木が日に日にのびのびと芽吹き、つぼみから色づき始めた花が、心を浮き立たせてくれるようです。

 この時季、芸術系の学校の卒業制作展が美術館やギャラリーで開かれており、行くと、作品に刺激され、パワーをもらう。自分もやらねばとの気持ちを胸に、春の作品発表に向かって制作に励んでいます。今月は、赤織部のことを書かせていただきましょう。

 黒を基調にした作品を主に発表しながらも常々、色見のための焼成を繰り返していました。ある時、織部釉(ゆう)(銅釉)作品を木炭と一緒にふた器の中に入れて密封し、酸素不足にして焼き上げました。ふた器から取り出すと艶のない美しい赤色に変化しており、これは使えると胸がおどった。釉(うわぐすり)の厚み、木炭の量など試行錯誤を繰り返すが、目指す色に安定せず…。釉の調合を整える中で、自然灰にすると具合の良いことや、ふた器の中に入れて炭化焼成させる木炭が大切だと気付き、木炭探しに。ある作家が宮城県七ケ宿で炭焼きをしている方を紹介して下さり、定期的に白炭をお願いするようになって安定度が増した。白炭と同送されてくる山日誌「山暮らしの日々の雑記」も楽しみにしている。

 本によると、赤織部とは、織部の一種で素地に含まれている鉄分が赤く呈色した作品とある。赤織部茶ワン(わん)も土・釉とも赤みを帯びた茶ワンと書かれているくらいで、資料、作品が少ないように思う。

 2001年、京都市東山区の石塀小路のギャラリーで「赤織部」と銘打った作品展を催した際、ある方が、古田織部の墓のある興聖寺(京都市上京区)に「掌を合わせに行かはった方が良いよ」と、花に線香も用意して案内くださった。また、個展会場でテレビの取材も受けるなど、意を強くしたことも思い出す。

 会場で「赤織部いい赤ですね、初めてです」と言ってくださった方もあり、自分の勝手な解釈ではあるが、織部釉を赤く焼き上げた作品なので赤織部として発表を続けています−と説明。資料や作品、これが本来の赤織部ですとか、たとえば古田織部の作品「赤織部」ですよなどの情報、出会いがあればいいのになぁと思っているのですが…。(雅美)

 3月3日は桃の節句。各地で、伝統を踏まえての祈りや、子供たちの無事な成長と幸福を願う、ひな祭りが行われることでしょう。桃の花や葉には長寿や薬効があり、紅色は魔よけ、白色は清浄、緑色は健康を表していると古来より言われています。わが家でも主人が作った陶のミニ雛、立ち雛、桃の花などを飾り、おすしや蛤のお吸い物をいただき、家内安全を祈って楽しみます。

 今月のお料理は、かわいいおひなさまをイメージして、薄焼き玉子で五目ずしを包んだ茶巾(ちゃきん)ずしを、味良く、彩り美しく作ってみました。盛り付ける時、色紙や桃の花でひと工夫した演出をすると、子供さんとの会話もはずみ、なお一層みんなで楽しめるひな祭りになりますよ。(泰子)

 茶巾ずしの盛り付けに使用した器は、土を薄い板にスライスし、折り紙のように折り曲げ、貼り合わせて作り出した角皿。半乾きのタイミングをみて白化粧掛け(磁土を流し掛けること)し、素焼き後、土灰釉を掛け粉引(こひき)皿に焼き上げた器です。(雅美)

片山雅美陶展

3月1日−9日午前10時−午後6時、大津市向陽町の龍泉庵 電話:077(574)1029。同13日−25日午前10時−午後6時(25日のみ午後4時)、大阪市北区天満橋の帝国ホテルプラザ2階のアート・ギャラリー尾山 電話:06(6356)3361。水曜休。

 会場では、おひなさまも並べる予定です。

茶巾ずし

【材料】
米1カップ、昆布5センチ角1枚、酒大さじ1、合わせ酢(米酢50cc、砂糖大さじ1と2/3塩小さじ1/3)、ちりめんじゃこ20グラム、卵3個(砂糖大さじ1/2 塩少々)、どんこ椎茸大2枚、煮汁(椎茸もどし汁160cc、砂糖大さじ1、濃口しょうゆ大さじ1、みりん大さじ1/2)高野豆腐1個、金時にんじん30グラム、煮汁(だし汁50cc、椎茸もどし汁50cc、砂糖大さじ2/3、みりん小さじ1、薄口しょうゆ小さじ1、塩小さじ1/3)、えび中5尾、煮汁(酒30cc、砂糖大さじ1/2、塩少々)、焼きあなご1/2枚、絹さや10枚、三つ葉6本、ゆで塩少々、サラダ油適量
【作り方】
(1)米を洗い、昆布と酒を入れて普通より少し硬めに炊く。
(2)どんこ椎茸は汚れをサッと洗い落とし、水につけゆっくりもどしておく。1センチ幅に切り、もどし汁で少し煮てから調味料を入れて煮含める。
(3)高野豆腐を少し水につけ、水気をしぼって7―8ミリぐらいのみじん切りにする。
(4)金時にんじんも(3)と同じ大きさに切り、一緒に煮含める。
(5)えびは洗って殻と背わたを取り、調味料で煮る。
(6)焼きあなごは少し温めて、2センチ幅に切り、飾りに使う。
(7)絹さや、三つ葉は色よくゆで水に放す。
(8)卵をよく溶きほぐし調味料を入れて混ぜ、焦げ目がつかないようにきれいな薄焼き玉子を焼く。径18センチのフライパンで卵3個であれば5枚ぐらい焼ける。
(9)合わせ酢にちりめんじゃこをつける。
(10)蒸らした米に(9)を混ぜ、あら熱が取れたら(4)を混ぜ合わせる。
(11)すし飯(約50グラム)を手のひらで小さく丸め、薄焼き玉子の中央にのせて包み、破らないように注意しながら口もとのひだを寄せ三つ葉で結ぶ。
(12)口もとにえび、焼きあなご、どんこ椎茸、きぬさやを彩りよく飾り、形を整えて器に盛る。

[京都新聞 2008年2月25日掲載]

毎月第4週に掲載します。

片山雅美(かたやま・まさみ)
1950年京都市生まれ。京都市工業試験場修了後、陶芸家西川實氏に師事。日展会友、京都工芸美術作家協会理事、日本新工芸家連盟評議員。
片山泰子(かたやま・ひろこ)
1954年、京都市生まれ。

もうすぐ桃の節句。陶のひな人形も手がけます

想い出の作品


土のかたまりを仕事場の地面にたたきつけると、やわらかい土に、自然石を思わせるような力強いかたまりの表情が現れる。気に入った形を見つけ、手で持っても表情、形が崩れない堅さになったころ、底より土を掻(か)き出し、空洞にして再び底を貼り付けて赤織部釉をかけて焼き上げた器。花生けとして使える作品です。そのほか、蓋(ふた)物・皿などに磁陶片をうめるなどして焼き上げております。


旬花


赤織部彩の手付きの花器に、春を感じさせる桃、小手毬(こでまり)、スイートピー。ひな祭りを祝う、のテーマをもって華やかに生けてみました。

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