■豆腐引き売り 台所へ一丁

 大きな鐘が路地裏に鳴り響く。寝そべった犬は驚かない。いつもやって来るおっちゃんを静かに見送る。

 京都市上京区椹木町通油小路東入ルの「入山とうふ店」は、月曜から金曜まで京都府庁のまわりを引き売りする。音を聞いたお客が器を手に顔を見せる。

 昨年、配達のエリアを増やした。近くの豆腐屋が廃業し、住民から要望があったためだ。

 「豆腐もたくさんの種類がある時代。うちの味を選んでくれて本当にありがたい」。店主の入山貴之さん(44)は言う。リヤカーを押す父を見て育った。まだまだ常連も多い。

 冷ややっこの季節。シャツをぐっしょりぬらして、今日も台所に一丁の豆腐を届ける。


前の記事あのころ ちかごろ top次の記事